つまり、一国の経済発展において、自動車産業は工業化の特異点となる。これを超えると世界が一変するのだ。そういう歴史的に積み上げられた事実の数々に対して、「ものづくりはオワコン」的浅薄な言葉が広まりつつあるが、100年と7世代にわたる経済繁栄の起爆剤をもう一度ちゃんと振り返ってまだそれを言い続けるのかどうかを問うてみたいわけだ。
いきなり7世代といっても別に世の中にそういう定義があるわけではなく、これは筆者の分類なのでちょっとここで簡単にまとめておこう。
- 第1世代 欧州 自動車の発明
- 第2世代 米国 自動車の産業化
- 第3世代 日本 自動車の輸出産業化
- 第4世代 欧州 ボーダレスによる自動車の海外生産
- 第5世代 日本とASEAN 経済協定と国際分業化
- 第6世代 中国 統制経済と覇権的自動車産業
- 第7世代 インド あらたな取り組み
さて、話は元に戻る。先に述べた通り、T型フォード以前のクルマをスーパーカーとするならば、T型フォードこそがわれわれが日々運転する乗用車の始祖にあたる。欧州で生まれた自動車は、米国で本格的に発展したのである。
もちろん、このT型フォード革命はすぐに欧州に逆流する。1920年前後には、欧州でも量産手法を前提にしたメーカーが次々に立ち上がっていった。例えばシトロエンは創業時から量産を意識しており、T型革命のフォロワーである。もっといえばT型フォード以前に創業した自動車メーカーは第1世代であり、プジョーなどの一部例外はあるものの、おおむねスーパーカーかそれに近いビジネスの会社だったと考えていい。
欧州大手メーカーによる量産型小型車カテゴリー進出の嚆矢となったシトロエンの5CV(Wikipediaより。パブリックドメイン写真)
ただし、何事も境目でパキッと変わるわけではない。さて、要するにこの時代、スーパーカー時代と量産車時代の端境期で、創業時のマセラティやアルファロメオは前者の流れだし、フィアットは後者の流れという具合に事業の方向性はそれぞれが信じる形で多様な発展を遂げた。
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ターボの時代 いまさら聞けない自動車の動力源 ICE編 4
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今回のお題は「自動車記事の書き方」。批判をする時は真剣な愛か怒りを持ってすべし。面白がってやらない。自分を立てるために書かない。そういう大方針の上に、一応の手順というのがある。基本形としては、自分がクルマの試乗に行く時の時系列を順に文字化していけばいい。
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