記事のネタというのは、ついつい最新ニュースの解説に終始しがちなので、たまには視点を切り替えて、歴史的観点から世界の経済発展が自動車とどう関係してきたのかという話を温故知新のスタンスで振り返ってみようと思う。自動車産業は20世紀以降、世界の経済覇権と密接な関係を築いてきたわけだが、その流れは誰もが分かっているようで、実は少々漠然としているからだ。
世界最初の自動車は、一般的には1886年にドイツのカール・ベンツが特許を取得したベンツ・パテント・モートル・ヴァーゲンだということになっている。
ただしそもそも何をもって自動車とするかの定義が諸説あり、1771年にフランスのジョゼフ・キュニョーが発明した蒸気機関の砲車とする説や、ベンツとほぼ同時の1886年にゴットリープ・ダイムラーが馬車にガソリンエンジンを搭載したMotorkutscheだとする説もある。4つのタイヤとガソリンエンジンという意味では、確かに自動車の先祖とするにふさわしいところもある。ちなみにkutscheとは英語のコーチで、要するに馬車。どうもサスペンション付きの馬車を指すらしいが、時代や国によって少々意味が変わるので、あくまでもざっくりした話だと思ってほしい。
フランスのジョゼフ・キュニョーが発明した蒸気機関の砲車。タイトル: キュニョーの砲車 作者: Roby ライセンス: CC BY-SA 3.0 Unported (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/) 変更: なしもうひとつ、「いやいや、世界初は1884年にドラマール・ドブットヴィルが助手のレオン・マランダンと製作して走らせたものが最初だ」という説もある。というかフランス勢はずっとこの説を主張している。
まあそんなわけで説はいろいろあるのだが、ワンオフではなく、製品として販売され、かつ公的な特許を取得して記録が明確という意味では、ベンツに軍配が上がる。なのでとりあえず「世界初はベンツ」が多数派になっているわけだ。ということで自動車と経済というテーマに関しては、この最初の欧州の時代は、単なる前史であり、本来の話はこれからだ。
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