ここ最近人気のハナマサだが、その歴史は紆余曲折があり、過去には経営不振に陥っていた時期もあった。東京都江戸川区で食品スーパーを始め、1983年には肉を強みとして銀座に業務用スーパーを開き、以降は急速に成長。100店舗を超える店舗網までに拡大したが、郊外で急拡大した店舗に不採算店が急増し、経営がつまずいた。
2008年には全日本食品(食品小売店、ミニスーパーなどのボランタリーチェーン)とファンドの支援、出資を仰いで再建を目指すことに。その後、2013年に精肉卸から発祥した生鮮スーパー運営のジャパンミート社(現JMホールディングス、東証プライム上場)の完全子会社となったことで、業績が急回復した。JMホールディングス(以下、JM)が、強力な生鮮スーパー運営ノウハウを持っていたからである。
JMはグループ売り上げ1548億円、経常利益74億円(2023年7月期)という巨大生鮮スーパー運営企業だ。中小スーパー、卸売などのM&Aも併用しつつ成長を続けており、この10年ほどで売り上げを倍増させた、知られざる有力企業である(図表1)。
同社は食肉卸から発祥し、スーパー店内での精肉売場運営で頭角をあらわした。総菜製造販売も内製化しつつ、商業施設内での生鮮スーパー業態を確立。特に、北関東地盤で巨大ホームセンターを運営するジョイフル本田(茨城県土浦市)のスーパーテナントとなり、同社とタッグを組んで生鮮スーパー「生鮮館」を大成功させた。これを基盤に生鮮スーパーを多店舗展開するに至る。ハナマサを傘下に入れ、その再建にも成功したJMは今まさに、成長を加速しようとしている。
JMが手掛ける生鮮スーパーの成長の原動力は、精肉卸としての調達能力を起点とした精肉の圧倒的なコスパにあるとされているが、それは同社が「異常値販売」と呼ぶ手法である。「特定の商品を大量に陳列し、値頃感がある商品を顧客にアピールすることで、購買意欲を高める」と表現しているが、これが実際に消費者の高い支持を得ている。
生鮮館は店舗当たり年商30億円ほどを売り上げるようなのだが、これは大型店を運営する食品スーパー大手ヤオコーの店舗平均売上に匹敵。一般食品も多く売っているロピア、オーケーが40億円ほどで食品スーパーのトップレベルであることを考えれば、JMの販売力がすさまじいことは分かっていただけるだろう(一般的な食品スーパーは15億円程度)。このノウハウをM&Aでグループ入りした企業にも適用可能であることは、ハナマサの業績からも分かる。
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