ウエルシア・ツルハが統合しても「業界の覇者」になれない理由 今後のカギを握る2社小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)

» 2024年03月29日 08時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

 業界トップのウエルシアと2位のツルハの経営統合で、ドラッグストア業界は騒然となった。実現すれば売り上げは2兆円超、次位となるマツキヨココカラをダブルスコアで引き離す圧倒的な規模を誇るグループが誕生することになる。

store ウエルシア(プレスリリースより引用)
store ツルハ(同社公式Webサイトより引用)

 「業界の覇権はイオンで確定」とも言えるこの再編は、ドラッグストア大手の時価総額にも影響を及ぼした(図表1)。この業界での時価総額トップは、収益力で他社を圧倒するマツキヨココカラだ。しかし、2月初旬には1.2兆円ほどだった時価総額が、3月下旬には1.1兆円程度と1割ほど下落。時価総額2位はコスモス薬品(売り上げ4位)だが、これも1割ほど下落した。

store 【図表1】各社株価より著者作成

 これに対してウエルシア、ツルハは2%ほど増えており、市場の見方としてはマツキヨココカラ、コスモス薬品の優位性が薄まり、ウエルシア、ツルハの評価が高まったことが分かる。しかし、意外にも時価総額を大きく増やしたのは売り上げ5位のスギHD(+10%)、6位のサンドラッグ(+9%)であり、不思議に思う人もいるだろう。なぜこうしたことになるのだろうか。

ドラッグストア業界の変遷

 ドラッグストアは1980年代頃から、まずは大都市部を中心に医薬品+化粧品(薬粧)の店として増え始めた。90年代にマツモトキヨシが首都圏で大きく成長し、広く世に知られる存在となった。

 2000年代になると、地方における軽自動車の普及と女性の免許保有率の上昇を背景に、ロードサイドに薬粧+日用雑貨を豊富に品ぞろえした、現在よく見かけるタイプのドラッグストアが広がった。この時、全国各地に地域毎のドラッグストアが成長したのだが、10年代以降は相互の商勢圏がぶつかるようになって競争が激化。ドラッグストアは統合再編の時代に突入していく。

 そして、現在のドラッグストア大手のほとんどが「同業他社を統合することで成長する」という経緯を経て今に至っている。中でも、多数の同業を統合して上位企業にのし上がった代表格が、ウエルシアとツルハだった。

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