ウエルシア・ツルハが統合しても「業界の覇者」になれない理由 今後のカギを握る2社小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)

» 2024年03月29日 08時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

覇者になるためには、大手同士の統合が必須

 しかし、ドラッグストア上位8社の売り上げ合計が市場規模の7割を超えるまでに寡占化が進んだ今、これまでのように中小を統合するという再編では、業界の勢力図を塗り替えることは出来なくなった。

 21年には、マツモトキヨシとココカラファインという大手同士の経営統合が実現。ウエルシア、ツルハといった中小ドラッグの統合体である大手に肉薄することになり、収益率も時価総額も2位以下に倍するマツキヨココカラ、かつての覇者・マツキヨが復活した。この時点で、業界の誰しもが「覇権を奪うためには、大手企業同士の統合は必然である」と分かっていたのである。

store マツモトキヨシの次世代店舗(プレスリリースより引用)

ウエルシア・ツルハ連合は覇者になれるのか

 今回の経営統合により、ウエルシア・ツルハ連合は売り上げ2兆円規模と圧倒的なトップシェア企業になるが、衆目が一致する業界の覇者とは言い難い。(1)収益率、(2)化粧品販売シェア、(3)事業基盤の安定性、などにおいてはマツキヨココカラの後塵を拝しているからである。(1)(2)は言葉通りだが、(3)事業基盤の安定性はやや分かりにくいかもしれない。これの意味するところは、店舗網の地域性である。

 首都圏中心部と京阪神の大都市基盤を固めたマツキヨココカラと異なり、他の大手ドラッグの店舗基盤は郊外や地方に存立している。このエリアは、人口減少や高齢化の進行で今後、大都市部に先行してマーケットが縮小。その上、今後も大手の出店競争が続くため、明らかなレッドオーシャンなのである。

 そんな郊外や地方において、他社を圧倒するスピードで成長しているのが、コスモス薬品を中心としたフード&ドラッグ各社である。フード&ドラッグとは、食品を低価格販売することで集客するドラッグストアを指す。薬粧+日曜雑貨という構成の郊外型ドラッグストアに大きな食品売場が加わった広い店を展開し、食品の売上比率が4〜6割を占める。代表企業はコスモス薬品の他、クスリのアオキやゲンキーなどがある。

store コスモス薬品(同社公式Webサイトより引用)

 食品の低価格販売がウリのフード&ドラッグ各社の勢いは、値上げラッシュの23年以降、さらに加速している。図表2はドラッグ大手の既存店売上動向だが、フード&ドラッグ組の伸びが著しいことが見てとれるだろう。ウエルシア・ツルハ連合は、今後もこうした同業ながら異業態の企業との死闘が続くのである。

store 【図表2】各社IR資料より著者作成

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