地域毎に大手ドラッグストアの勢力関係を表したのが図表3(1〜6)だ。大手ドラッグストアは各地方から勝ち残って大きくなっているため、その地盤が異なっている。例えば、ウエルシアは首都圏郊外、ツルハは北海道や東北、マツキヨココカラは千葉発祥ながら首都圏中心部、コスモス薬品は九州、スギHDやクスリのアオキは中部、といったように本拠地でシェアが高い傾向がある。ただ、図表3をみるとそうとも言い切れない状況があるのは、ドラッグ大手がM&Aを多用してきたためだ。
図表3は、約10年間における各大手の売上高の推移を示している。この間に大きく増えている場合、多くは企業買収が要因だ。例えば、北海道、東北地盤のツルハが中部や中四国でも大きな存在感があるのは、静岡の杏林堂や広島のハーティーウォンツ、愛媛のレディ薬局などを仲間に入れたからである。
ウエルシアも同様で、CFS(静岡)、ププレひまわり(岡山)、コクミン(大阪)など、各地の有力企業を傘下に入れることで業容を拡大してきた。このように、業界ではM&Aによる規模の拡大を前提に、シェア競争を展開するのが定石だった。それだけに、他社買収をすることなく、自前出店だけで業界4位となったコスモス薬品は驚異的存在とも言える。
また、地元・九州で圧倒的なシェアを確立しているコスモス薬品は、東進を進める中で、九州、中四国、近畿の各地域で10年ほどの間に1000億円以上の売り上げを伸ばしている。進出時期が遅いため、今は数百億円の売り上げである中部や関東も、同じペースか、それ以上のスピードでシェアを増やしつつある。これまでの経緯を踏まえると、コスモス薬品は東進を続けつつ、進出エリアごとに売り上げを年100億円ほど伸ばし続けている。つまり、そのエリアにおける他社のシェアは着実に削り取られているのだ。
これは、巨大トップシェアとなったウエルシア・ツルハ連合にとっても同じこと。それゆえ、株式市場は「ウエルシアやツルハの単独時価総額が、コスモスに追い付かない」と評価をしているのであろう。ちなみに、コスモスとマツキヨココカラの利害は当面ほぼ対立しない。ロードサイドでは最強といわれるコスモスも、マツキヨココカラの牙城である大都市中心部にはほぼ出ていかないからである。
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