株価の話に戻れば、サンドラッグ、スギの評価が上昇しているのは、ウエルシアとツルハの経営統合が「これにて完了」と思われていないことの現れだろう。ウエルシア・ツルハ連合、マツキヨココカラ、コスモス薬品が業界の3極となっている中、さらなる仲間を必要としているウエルシア・ツルハ連合の同盟者候補である両社に対して、株価上昇イベントを期待しているということだ。
サンドラッグは首都圏発祥ながら、九州地盤のダイレックスという強力なフード&ドラッグを持ち、スギは3大都市圏中京に強い基盤を持つ。両社の意向はさておき、どちらもウエルシア・ツルハ連合が仲間に迎えたい重要なプレイヤーに違いない。また、サンドラッグとスギが組んだ場合、3極に割って入る可能性もある。
ウエルシア・ツルハ連合が生まれたことで、業界は大手同士の合従連衡による最終決戦の時代に入った。しかし、個人的には、単独路線を貫くコスモス薬品が10年後には1兆円ほど売り上げを拡大していると予想している。地方、郊外の市場縮小、シェア移動を考えると、単なる合従連衡だけでは覇権を確立できないだろう。
例えば、コスモスが優勢を確立しつつある九州、中四国でそのシェアを奪うための画期的な戦略が必要になる。ウエルシアは、イオン九州と組んでイオン型フード&ドラッグ「ウエルシアプラス」を開発。売り上げ2000億円までの拡大を目標にしていると公言しているが、ウエルシア・ツルハ連合が真に覇者となるためには、「コスモス封じ」の作戦が重要になる。その意味でも、サンドラッグのダイレックスは、コスモスと九州・中四国で渡り合える強力な戦力と言える。
イオンが10%弱株式保有しているクスリのアオキの動向は、すでに注目の的だ。今後の各社の打つ手次第で、ドラッグストア業界のパワーバランスは、まだまだ大きく変化していく可能性がある。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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