では、JMが乗り込んだ京阪神の食品スーパーの現状について整理しておこう。図表3は大阪、京都、兵庫で活動する主な食品スーパーの銘柄をリストアップしたものだ。このエリアは地元勢としてライフ、万代、関西フードマーケット(エイチ・ツー・オー リテイリンググループ)が、それぞれ売り上げ4000億円弱で鼎立(ていりつ)。その中で、総合スーパーを含めたイオングループ(旧マックスバリュ西日本のフジ、光洋)が推計売上6000億円超でトップクラスに位置する、といったマーケットになっている。
加えて、昨今ではこの首都圏に次ぐ規模のマーケットを狙って他エリアからの進出も増えつつある。代表格は今、売り出し中のディスカウントスーパー・ロピアであり、すでに同地域に15店舗を出店。売り上げ600億円以上(推計値)を確保したようだ。また、滋賀の平和堂の売り上げは1200億円を超えており、中部地方の成長企業バローもすで240億円以上になっている。
これからということでは、かつて関西スーパー争奪戦で話題となったディスカウントスーパーの王者オーケーが東大阪に関西1号店を出店。そこに、JMの尖兵としてハナマサが乗り込んでいるという構図なのである。京阪神マーケットの争奪戦は一気に過熱すること必定だ。
JMの関西進出はこうした事情をよく理解した上での布石のように思われる。急速に競争が激化するこの地区において、地場大手と進出組が激戦を繰り広げることになれば、さきほどのリストには入っていない中小スーパーの中から脱落組が現れる。一般的には、大手スーパーは、自社の店舗スタイルに合わない企業まで再生することが難しいため、古い店舗、小さい店舗のスーパーの受け皿になりにくい。
しかし、生鮮運営ノウハウのあるJMにとってはそこがハードルとならないため、中小の駆け込み寺となれる可能性がある。そうして一定の売上規模まで集めれば、加工センターを投入して関東でのモデルを再現できるのである。何年か先には、JMグループが中小スーパー再生工場となって、一夜城のごとく巨大加工センターをオープンする、というニュースが業界を震撼させる日がくる……そんな妄想も浮かんでくるのである。
中井彰人(なかい あきひと)
メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。
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