――経営コックピットは全社員が見られるものなのでしょうか。
現時点では部門長や統括所長など、ある一定の職階以上の従業員だけが閲覧できるようにしています。ただ、ゆくゆくは従業員全員が見られるようにしていきたいとも考えています。一方でインサイダー情報に該当する情報も多分に含まれていますので、そういった問題を加味しながら、誰にどう見せるかを考えながら進めていきたいと思います。他にもセンシティブな情報がありますので、情報の重要度によって見せる人は決めている側面もあります。
――経営コックピットの導入によって、部門長以上の人の意識が変わった点はありましたか。
ファクトを見ながら、データドリブンによって物事を考えるマインドセットにつながっています。今までは、こうした部門ごとに持っているデータは、なかなか共有しようとしない動きもありました。むしろ「外に出さないことのほうが力だ」という考え方もあったかもしれません。しかしデータは会社全体の価値、財産なのです。それをいかに全員が使えるようにするかが非常に大事だと考えています。
――どのようにマインドセットを変えていきたいですか。
今までは自分の思いで部門ごとの方針を決めていたような側面もあったのですが、いざ数字を見たら実際には違った、ということは起こりがちです。データを参照していても、過去のデータの話を元にして議論をするケースもありました。
こうした思い込みを捨てて、ファクトに向き合うだけでなく、未来志向にマインドを変えてもらうことがものすごく重要です。ファクトに向き合い、そこからいかに未来に向けて仮説を立てて改善していくか。これが本質です。
中にはデータを開示することによって「何でこんなに低いんだ」ということを言う人がいます。データが低いこと自体は悪いことではありません。大事なのは、何が良いのか悪いのかを話すことではなく、良くない現実を受け入れること。未来志向に切り替えて、実際に良くしていくことです。組織の弱点も定期的に見ながら、高めていきます。こういうところからマインドセットを変えていきたいですね。
――今回のDXでは、デジタル障がい者手帳である「ミライロID」と連携し、社内アプリを通じた健常者との連携の強化も示唆しました。
まずは小さく始めて、よかったら広げていく考え方です。今回、食堂で困っている障がい者を一般社員がサポートする例を出しましたが、あれはあくまで一例です。「社内で障がいのある人を助けたい」と思っている社員はたくさんいるのです。
これも例えばですが、障がいのある社員のサポートをしたら、社内の福利厚生に使えるポイントを付与するなど、きちんとその行いを評価してあげる仕組み作りも大事だと考えています。そうすることによって、より従業員同士が支え合い、組織にさらなるバリアフリーが実現すると思います。
社員一人一人が自発的に活動するDXを進めていくことで、組織の風通しをさらに良くしていけます。NECではそんな文化が既にできてきていますが、デジタルIDの力によってさらに推し進めていきたいですね。
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