ハリス氏とトランプ氏のいずれが大統領に就任しても、円高は避けられないという見通しがある。それぞれの政策がどのように為替市場に影響を与えるのかを考察する。
ハリス氏が選出された場合、同氏は再生可能エネルギーやインフラ投資への積極的な支出を伴い、米国経済の長期的な成長を図ると見られる。しかし、これらの投資は短期的にはドルの価値を押し下げる可能性がある。特に、再生可能エネルギーへの巨額投資は、米国内の需要を刺激する一方で、貿易赤字を拡大させることが予想される。結果として、ドルが弱含むことになり、円高が進行するリスクが高まる。
次にトランプ氏再選の場合だが、彼の保護主義的な貿易政策がドル安・円高を招くだろう。トランプ氏は米国製品の競争力を高めるためにドル安を推進する姿勢を見せる可能性が高い。関税の引き上げや貿易交渉の強化により、米国の貿易赤字を減少させることを目指す。
しかし、これらの政策は貿易パートナー国との関係を悪化させ、為替市場においてドルの信頼性が低下するリスクがある。結果として、ドル安が進行し、円高が進む可能性がある。
アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策も、ドルの価値に大きな影響を与える。現在、FRBはインフレ抑制のために金利を引き上げる姿勢を示しているが、ハリス氏が大統領に就任しても、トランプ氏が大統領に就任しても、2024年中には少なくとも1回以上の金利の引き下げが見込まれており、ドル高のペースは鈍化すると考えられている。
トランプ氏再選の場合の方が利下げに対するプレッシャーは大きいと見られているが、ハリス氏が大統領になったとしても、同氏の政策的に金利を高止まりさせるメリットは乏しく、経済成長を優先して低金利政策が継続される可能性が高い。いずれにせよ、低金利政策はドル安を促進し、円高を引き起こす要因となる。
そして日本銀行(日銀)の金融政策も、円高の進行に影響を与えるといえる。現在、日銀は超低金利政策と異次元の量的緩和から脱却すべく「金融政策正常化」に乗り出している。長期金利の高騰に伴い、円に金利がつくようになると、円を買う動き、つまり円高が進む公算が高い。
どちらの候補が大統領になっても、為替相場がドル安・円高に与える影響は避けられないばかりか、両国の中央銀行の政策を比較してもいずれもドル安・円高方向の金融政策となっている点に注目すべきである。
ハリス氏の積極的な財政政策とトランプ氏の保護主義的な貿易政策は、それぞれ異なる理由でドルを弱める可能性があり、円高が進むと、日本の輸出企業にとっては競争力が低下する懸念がある。為替の影響を踏まえると、自動車や電子機器といった主要輸出産業は「もしハリ」シナリオにおいても政策ベースのプラスを相殺してしまうような影響を受ける可能性がある。
日本企業はいずれにせよ、円高リスク対策を講じる必要がある。為替ヘッジの強化や、内国生産の拡大などが考えられる。また、日本政府も経済政策を見直し、輸出産業への支援策を強化することが求められる。長期的には、内需拡大や新興市場への進出など、経済の多角化を図ることが重要となってくるだろう。
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