バイデン大統領が2024年の大統領選から撤退し、副大統領のカマラ・ハリス氏が民主党の大統領候補として急浮上している。一部メディアが報じた最新の世論調査では、ハリス氏の支持率がトランプ前大統領をわずかに上回るような結果も散見される。
2024年の初頭から、日本国内でもトランプ氏再選の可能性を大ヒット書籍の略語「もしドラ」とかけて表現した「もしトラ」という造語が定着するなど、その先行きには注目が集まってきた。トランプ氏の暗殺未遂事件直後には、再選の確実性が高まったとして「確トラ」ムードに移行していたが、バイデン氏の“勇退”によって結果の見通しは立ちづらくなってきた。
この記事では、もしハリス氏が大統領に就任したらどうなるかという「もしハリ」のシナリオを確認した上で、日本経済や為替相場に与えうる影響について考察していきたい。
ハリス氏が大統領になった場合、彼女の政策はバイデン政権のリベラルな政策の流れを引き継ぐとされる。その政策の主な柱はおおむね以下の通りだ。
まずハリス氏が重視するのは、再生可能エネルギーと気候変動対策の推進だ。具体的には、太陽光や風力発電などのクリーンエネルギーへの投資を拡大し、バイデン氏が掲げた「2035年までに電力部門の炭素排出ゼロ」を引き続き目指すと見られる。
これにより、再生可能エネルギー分野の企業は大きな成長機会を得るだろう。またハリス氏は、電気自動車(EV)市場の拡大を目指しているため、トヨタ自動車や日産自動車、ホンダなどの日本の自動車メーカーも恩恵を受けると予想される。
また、バイデン政権のインフラ投資計画をさらに推進する意向を持っていることにも注目したい。道路、橋梁(りょう)に1100億ドル、公共交通システムに900億ドルを投じる計画に加えて、高速インターネット網を中心としたデジタルインフラにも650億ドルの予算が割り当てられている。これにより、国内の経済基盤が強化され、新たな雇用が創出される見込みである一方で、政府債務や財政赤字が膨らむ懸念もある。
米国内では、老朽化したインフラが社会問題となっており、これらを更新することで労働生産性が向上するなど、経済全体の効率性上昇が期待できる。また、鉄道インフラなどについては日本企業が参入しているほか、建設機械や工具なども日本製が高いシェアを誇っていることから、日本の鉄道関連企業や建設業、機械業界においても波及効果が期待されそうだ。
ちなみにハリス氏は、富裕層や大企業に対する課税を強化し、その税収を原資として医療保険の拡充、教育への投資など、所得格差の是正を図る政策を推進するという。この政策は、中間層や低所得者層の経済的安定を図ることを目的としており、消費の拡大を通じて経済成長を促進する効果が期待される。日本企業からは、医薬品業界が恩恵を受けることが考えられる。
ただし、化石燃料産業や多国籍企業、軍需産業は厳しい状況に直面する可能性がある。また、ハリス氏は企業の法人税率を現在の21%から35%に引き上げることを提案しており、これが実現するとソニーのような多国籍企業や米国の投資先が多いソフトバンクグループといった企業群については利益率が低下する可能性がある。
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