「半端な対策では命にかかわる」 山善の”プレミアム水冷服”がたちまち完売、現場のニーズとどう合致した？（2/2 ページ）

[三好一葉，ITmedia]

　ファン付きウェアのこうしたデメリットに対応すべく広がっているのが、「水冷式」の冷却服。山善のダイレクトクールもその一つだ。

　俣野氏によれば、主に建設現場・工事現場でニーズがあったファン付きウェアに対して、ダイレクトクールは機械の放出熱がこもりがちな工場内でのニーズが大きく、「1年を通して使用する現場もある」という。また、かさばってしまうファン付きウェアとは異なり、上からハーネスを着用できる点も強みとなっている。

ひもを活用し、フリーサイズにすることにもこだわったという（編集部撮影）

　粉じんを巻き込む危険のある現場でも導入されているほか、農薬を巻き込まずに散布作業が可能なことから、農家からの需要も少なからずあるという。

　意外なところで好評を得た例が、映画の製作現場だ。真夏の撮影でもスタッフに用いられてきたファン付きウェアだが、送風音が出てしまうことから、カメラが回っている時はスイッチを止めざるを得なかった。このため、「無音」という点にも、思わぬニーズがあったようだ。

連日の猛暑に「値段は気にしない」の声

　企業からの大口注文も少なくないというダイレクトクール。高価格帯となるプレミアム仕様も、「用意した分がたちまち完売となった」というが、どのような観点から選ばれているのか。

　俣野氏は、「値段は気にしない」と言う顧客が多いことが印象的だと話す。「中途半端な猛暑対策では現場で働く人たちの命にかかわるので、多少高くてもしっかり身体を冷やしてくれる商品が求められている」（俣野氏）。「例年にない猛暑」と形容される暑さが毎年のように続く中、現場仕事での暑さ対策についても、目先の「コスパ」よりも確実な機能性を求める風潮が高まっているようだ。

　暑さ対策を徹底すべく、ファン付きウェアと重ね着する人も少なくないという。俣野氏は今後の商品展開について、「真夏のスポーツ観戦などでも一層の暑さ対策が求められている。一般向けにも訴求をより広げていきたい」と意気込みを語った。

モバイルバッテリーも使用可能という（同上）