三和建設(大阪市)が手掛ける「ゼネコンがつくったしおゼリー」が好調だ。2021年4月の発売から累計で100万本を売り上げ、2024年にはさらに100万本を販売する見込みだという。全くの異業種への参入といえるこの取り組みは、なぜ成功したのか。担当者に聞いた。
同商品はスティック状のゼリー。フレーバーはりんご・レモン・ライチ・マスカット・ぶどうの5種類をそろえており、約100本入りで4320円。同社公式ECサイトで販売している。
担当した大阪本店長の川口秀夫氏によると、開発のきっかけは、同社が倉庫の建設を手掛けた岩瀬コスファ(東京都千代田区)との酒席で「建設現場の暑さ」が話題に上がったことだった。岩瀬コスファが機能性食品やサプリメントを取り扱う会社だったことから、共同でゼリーを開発する話が動き出したという。
当初は社内配布用を想定。ネーミングとパッケージデザインも担当した、広報の北纓(きたお)真弓氏は「塩あめや塩タブレットは口の中の水分が奪われてしまいますが、ほぼ水分のゼリーならもう少し熱中症が改善できるのではと考えました」と話す。
建設現場で働く作業員が1日4回の休憩時に食べることを想定し、塩分やコラーゲンを配合。味については社員の試食と投票を経て、7種類の候補の中から5種類を選んだ。
2020年から作業員への配布を始めたところ「食べやすくおいしい」と好評を呼び、これまで毎年数人は発生していた熱中症患者も出なくなったという。
社内での評判が外部にも広がり、一般向けの販売を開始したのは2021年の4月。屋外作業に従事する家族を心配する人などから多くの注文があり、主に一般向けで売り上げを伸ばしたという。
その他にも、消防団の訓練やスポーツの場面、夏場の畑仕事といったさまざまな需要に合致したようだ。糖尿病患者など、糖分の摂取を避けながら塩分を補給したいというニーズを持つ人からも支持されているという。
しかし、当初からの目的は「建設業から熱中症をなくすこと」だと強調する川口氏。同業からのリピート注文もあるとした上で、「しおゼリーの導入をきっかけに、休憩時間中のコミュニケーションが増えた」といった喜びの声ももらっていると話す。現場目線で食べやすさを追求した同商品は、熱中症対策を根付かせる一助となるか。
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