不動産業界のDX推進において活用するAI技術や先端技術との親和性、活用方法やその効果、将来性などについて、アットホームラボ代表取締役社長の大武義隆氏が解説する。
これまでAIを活用した不動産DXについて解説してきました。今回は、人間が何かを決める際に、頭の中でさまざまな情報を比較して絞り込む「人間の思考プロセス」に着目した不動産業務の効率化にフォーカスしてみたいと思います。
今回取り上げるのは、ChatGPTなどの生成AIをあえて使用せず、実用性と効果を優先した不動産DX事例です。この事例は不動産業界にどのような革新をもたらすのでしょうか。
アットホームラボ株式会社 代表取締役社長
アットホームに入社後、営業職・企画職などに従事。
2019年5月にアットホームのAI開発・データ分析部門より独立発足したアットホームラボにて、テクノロジー部門を統括し、不動産分野の課題解決に適したさまざまなAIモデルの企画を担当。23年4月より代表取締役社長に就任。
消費者は不動産ポータルサイトなどで住まいを探す際、多数の物件を比較しながら一つに絞り込みます。例えば、駅徒歩分や専有面積の広さ、築年数など、異なる物件を比較するには自身で物件の特徴に関する情報について、優劣の整理が必要です。
しかし、それぞれの要素ごとの優劣を頭の中で同時に整理するのは容易ではありません。そして、新しく物件情報が表示される度に、再び基準を変えて要素間の比較をしなければならないため、消費者の頭の中は情報過多となり、確信が持てないまま物件選びに多くの時間を要しています。
消費者が物件選びの過程で無意識に行っている複雑な比較検討作業を代行し、その結果を柔らかい平易な言葉で可視化することで、スムーズな住まい選びを実現できるのではと考えました。
アットホームでは、この消費者の物件選びの思考に着目し、マーケティングシステムの企画・開発・運営などを手掛けるGFL(横浜市)の特許技術を活用した「比較コメント」というサービスを検討しています。
このサービスは、複数の物件を比較検討する消費者へ、「比較した上でおすすめする理由」を生成・提示します。物件の事実特徴をもとに、メリットのみならず、あえてデメリットも開示し、判断しやすいよう簡潔に伝えるのが特徴です。
あらかじめ作成された短文フレーズを、比較関係のパターンに応じて推奨コメントに編集・生成し、消費者にとって分かりやすい平易な言葉で訴求します。これにより、消費者は自分に最適な物件を迅速かつ効率的に見つけることができます。
表示されるコメントは、物件のファクト情報をもとに、事前に作成されたフレーズを構文として組み立てて生成されるため、情報の正確性が保証されています。
消費者が安心して利用できるように、虚偽の情報が含まれるリスクを回避しています。比較による特徴の優劣をもとにコメント文として生成する、というこの特許技術については、アットホームが前述のGFL社より、不動産事業における独占使用許諾権を得ています。
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