セダンが売れる時代はもう来ないのか クルマの進化で薄れていく魅力高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2024年08月03日 10時02分 公開
[高根英幸ITmedia]

 日本の乗用車市場は、軽自動車とミニバンとSUVで全体の8割を占める印象だ。セダンやクーペ、ステーションワゴンなどは極めて少数派となってしまった。

 トヨタの場合、ボディバリエーションの多いカローラやヤリスなどは、SUVもハッチバックも全部ひっくるめた数字だけに、正確な販売台数はつかみにくい。カローラでは、カローラスポーツやツーリングワゴンも善戦しているが、SUVのカローラクロスの人気が高い。カローラに残されているセダンは多くが教習車としての需要で、残りは営業車である。

 どうしてセダンはここまで衰退してしまったのか。セダンには魅力がなくなってしまったのか。

 そもそもセダンのメリットとは何だろうか。リアのオーバーハングにトランクルームがあることによる、後席の快適性がまず挙げられる。リアのホイールハウスから侵入するロードノイズがトランク内で吸収されるため、後席には届きにくいのだ。また前後方向の揺れであるピッチングがゆったりとした動きになり、乗り心地も高めやすい。

 ゆったりした、それでいて無駄のない動きを実現することにより、ハンドリングも自然で落ち着いた乗り味に仕立てやすいのだ。さらに後続車から追突された際にも独立したトランクルームがクラッシュボックスとなって衝撃を吸収するため、キャビンの安全性が高い。

1980年代終わり頃、トヨタ・クラウンは2.8Lエンジンを3Lへと排気量アップした。外観はエンブレムの違いだけだが、乗り換えるオーナーが続出。当時の人気ぶりがうかがえた

 だがこうしたクルマの動きや快適性、衝突安全性については、自動車メーカーの技術開発、解析の高度化によって、トランクを持たないハッチバックボディでも高いレベルを確保できるようになった。タクシーがセダンからハイトワゴンのJPNタクシーに入れ替えられたように、スペース効率や使い勝手を考えるとセダンである必要性は薄いのだ。今や独立したトランクを求めるユーザーは少なく、ハッチバックの方が使い勝手がいいと思うユーザーが増えている。

 昔はオフロードを走行できるような走破性の高いクルマは、ステアリングを操作してもグラグラとロールするばかりで、なかなか旋回を始めてくれないばかりか、限界も低ければ応答性も悪く、個人的には舗装路を走っても楽しいと思えなかった。

 ところが、SUVというカテゴリーが登場して以来、サスペンションの構造やジオメトリー(動き方)、アンチロールバーの強化などによって、ロール剛性を高めており、現在のSUVはハンドリング性能も十分確保されている。

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