衰退途上国ニッポンの、それでも増えない女性管理職 「数」を軽視した先に待つのは?河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)

» 2024年08月09日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 先日、パリオリンピックの開会式を見て「そっか。あれから3年なのね」と、東京五輪があったことを思い出しました。

パリオリンピックの装飾(画像提供:ゲッティイメージズ)

 「あったことを思い出した」なんて奇妙な言い方になりますが、自由で、斬新で、革新的な開会式で幕を開けたパリオリンピックとは対照的。東京五輪に刺激された記憶があまりないのです。

 かすかな記憶を掘り起こしてみたところ、あるのはネガティブな思い出ばかり。残念なことに、それらは全てアスリートの活躍とは一切関係のない、しょーもない言動でした。

 世界から日本の異常な暑さへの無策を指摘されようとも、コロナ禍での開催を疑問視する声があろうとも、権力者たちは「やればできる!」と無責任に精神論を繰り返しました。

 2021年2月には「女性は会議が長い発言」、3月には「女性の容姿侮辱演出」で、再び世界中からバッシングされ、開幕直前の7月には開会式で楽曲の作曲担当だったミュージシャンが辞任し、オリンピックが終わったあとは、オリンピック憲章にまったくそぐわない「談合」「汚職」という言葉が飛び交う事件が相次ぎました。

 そんな「負の事件」の中で、「これで日本も変わるかも!」と期待された一件がありました。大会組織委員会の森喜朗会長(当時)の発言が、国内外から「sexist comments=性差別的なコメント」と批判されたことです。

 「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」――。

 この問題発言がきっかけとなり、大会組織委員会の会長に橋本聖子さんが就任。女性理事を大幅に増やしました。その動きから、誰もが「やっと日本も変わるかも!」と、日本という国が外圧に弱いだけにそう願いました。

 しかし、実際にはどうでしょうか。確かに、以前に比べて性差別は減りましたし、女性活躍という言葉は「ジェンダー」に変わり、「女性初」だの、「女性同士のバトル」だのといったマスコミが好んでいたフレーズを聞くことも滅多になくなりました。

それでもずっと、女性管理職が増えない

 とはいえ、世界の中の日本を見ると、全く変わっていません。

 毎年発表されるジェンダーギャップ指数で、「万年ビリグループ」をいまだに爆走中です。

 「世界ジェンダー・ギャップ指数(2024年)」で、日本は146カ国中118位(総合)、政治分野113位、経済分野では120位。主要7カ国(G7)のトップはドイツ(7位)、英国(14位)、フランス(22位)、カナダ(36位)、米国(43位)、イタリア(87位)と続き、日本は最下位です。

 労働政策研究・研修機構の調査では、2022年時点での日本の女性の管理職比率はたったの12.9%。米国41.0%、フランス39.9%、ドイツ28.9%を大きく下回り、韓国の14.6%よりも少ない状況が続いています。

 そもそも安倍政権時代に「女性を輝かせる!」を合言葉に、「リーダー的地位に占める女性の割合を30%!」と数値目標を掲げていたのに、その数値目標はひっそりと消され、「なかったこと」にされてしまいました。

 結局、日本は変わらなかった。11年前の2013年の国連総会でも安倍元首相が「Society Where Women Shine」(女性が輝く社会)と連呼していたのに、何も変わらなかった。変わらないことを日本は選択したとしか思えません。

 「このままではマジでヤバい!」と思ったのでしょうか。

 先日、厚労省の有識者検討会が、女性の管理職比率を企業が開示する必須項目にすべきだとする報告書をまとめ、2025年の通常国会への関連法案提出を目指すとの報道がありました。

 現在の女性活躍推進法では、女性の管理職比率の公開は義務ではありません。企業規模に応じて1〜3つ以上を選んで公開する選択肢の一つにとどまっています。

 女性管理職比率の開示は、当然進めるべき施策です。しかし、クオータ制も含めた厳しい法律を整備しない限り、日本が変わることはない、とあえて断言します。

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