セブン「宅配ピザ」参入の衝撃 テスト販売から一気に拡大も納得の理由(3/3 ページ)

» 2024年08月26日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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ピザは粗利率が高い商品

 セブンがピザ宅配に参入し、大手ピザ宅配チェーンが店舗を増やすなど、ピザ市場はこれからも拡大が見込めます。これだけ市場が盛り上がる背景には、ピザがもうかる商品ということがあるでしょう。ピザーラのフランチャイズ向けモデル数値を参考に、収益構造を見てみます。

ピザはもうかる商品?(ピザーラのフランチャイズモデル数値を基に筆者が作成)

 これによると、20坪の店を出せば月間700万円ほどの売り上げになるシミュレーションです。立地にもよるため、必ずしも数値通りにはいかないでしょうが、このシミュレーションでは1店舗につき、年間8400万円の売り上げ創出が可能です。粗利率は65.7%と、飲食の中でも比較的安定した粗利が確保できる業態であり、年間の経常利益は540万円を狙える構造です。この辺りも、セブンがピザを始めた理由の一つでしょう。

セブンが宅配するマルゲリータ(事業説明会で編集部撮影、以下同)
セブンが宅配する照り焼きチキン

 実はセブンだけでなく、食品スーパーでもピザを切り札として強化し始めています。ただし、焼きたてピザで勝負するにはそれなりの設備と手間がかかることから、注力しているチェーンも全店で導入しているわけではありません。実際に都内の店舗をまわった際には、大手スーパー10店舗中、全てのスーパーで冷凍ピザを品ぞろえしていたものの、店内で焼きたてピザを陳列していたのは2店舗のみでした。

ピザーラのマルゲリータ(筆者撮影、以下同)

 しかし、販売していたスーパーではピザが人気で、焼きたての時間を狙って購入していく人が何人もいたほどです。比較のためにスーパーの焼きたてピザとピザーラを食べ比べましたが、スーパーのピザはピザーラにひけをとらないほどの味で驚きました。

 なお、セブンも比較的繁盛している店を中心に5店舗ほどまわりましたが、まだ焼きたてピザを導入しているのは1店舗もなく、ある店舗のオーナーに話を聞くと「まだテスト中でどこで販売しているかも私たちには知らされていないんです」とのこと。

 このように、焼きたてピザは今や宅配ピザチェーンだけでなく、ベーカリーやスーパー、コンビニなどの店頭にも並び始めており、その味やこだわりも各社各様です。イタリアでピザらしきものが生まれたとされるのが16世紀、それが日本で広がり始めたのは1960年代といわれています。つまり、ピザは日本ではまだ60年ほどの歴史しかなく、これから日本でどのような商品へと進化していくのか。セブンの取り組みを中心に注目です。

クイーンズ伊勢丹のマルゲリータ
大手スーパーライフのマルゲリータハーフサイズ

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。直近では著書『図解入門業界研究 最新 アパレル業界の動向とカラクリがよ〜くわかる本[第5版]』を刊行した。

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