米小売大手ウォルマートが従業員の業務効率と顧客体験(CX)の向上に向け、生成AI活用を戦略の中心に位置付けている。同社は、8億5000万件に及ぶ製品カタログの作成とデータ改善に、生成AIを活用。データ解析能力が上がり、従業員が店内の商品在庫を素早く見つけ、顧客の元に提供できるようになるなど効果が出ているという。
同社幹部は「生成AIがなければ、同じ作業を同じ時間内に完了するために、100倍の人員が必要だっただろう」と述べている。
CX向上に向けた生成AI活用の取り組みは、同社の2025年第2四半期決算発表で幹部が述べた。データ解析能力の向上により、店舗やオンラインにおける顧客体験を支える裏方業務が改善したという。
同社のダグ・マクミロンCEOは、同決算発表において「カタログ内のデータ品質は、顧客が探している商品を見つけて購入することから、在庫の管理方法、注文の配送に至るまで、われわれが行うほぼ全ての業務に影響を与えている」と述べた。
生成AI活用による主な店内作業の改善点として、従業員がモバイルツールのようなテクノロジーを使うことで、在庫がどこにあるのかを素早く把握。商品を迅速に陳列棚に補充できるようになったほか、購入したい顧客の元に早く届けられるようになった。
「『宝探し』のように商品を探し出す過去の作業から大幅な進化を遂げた」と同社米国部門の社長兼CEOであるジョン・ファーナー氏は語った。
さらに、生成AIは、eコマースにおける顧客体験の向上にも貢献しているという。
ウォルマートのAIツールは、顧客の意図データと改善された製品データを組み合わせ、顧客のニーズに合った商品を提示できるとファーナー氏は述べた。AIは商品表示ページの詳細も改善し、顧客がその商品が自分に必要なものかどうかを判断するのを手助けするという。
ウォルマートのオンライン商品の品ぞろえが拡大する中で、より優れた検索機能がデジタル体験の効率化を進めているようだ。
「品ぞろえが拡大する中で、生成AIのような新しいツールを使い、高品質な形で商品を表示する能力や、検索機能の改善によって、季節、セッション、週の時間帯ごとに顧客が何を求めているかをより良く理解できるようになった」と、ファーナー氏は述べている。
ウォルマートは、顧客が注文した通りの商品を期日通りに届ける「パーフェクトオーダー」(完璧な注文)に注力している。
ファーナー氏によれば、パーフェクトオーダーは、摩擦をなくし、サブスクリプション(定額課金)サービス「Walmart+」の顧客体験スコアを向上させるための鍵と位置付ける。無料配達が同サービスの主要な特典の一つとなっており、より良い注文履行が当四半期のWalmart+の会員数を2桁成長させる原動力となっている。
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