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チョコザップのステマ問題、消費者庁が措置命令――「広告」と明示してもファンに愛されるには(3/3 ページ)

» 2024年08月27日 10時30分 公開
[金森努ITmedia]
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宣伝効果を「消費者との信頼関係」で測る時代へ

 これらのアプローチを実行するためには、企業内における意識改革が必要である。企業の広告活動はしばしば広告効果を最大化することが最優先され、消費者との信頼関係は二の次とされてしまう。

 しかし、ステマへの目が厳しくなる今の時代、企業は消費者との長期的な信頼関係を重視する方向にシフトする必要がある。

 インフルエンサーとの契約においても、単発の宣伝活動ではなく、長期的な関係を築くことで、インフルエンサーが自然な形で製品を推薦する機会を増やせる。また、企業は消費者からのフィードバックを積極的に取り入れ、その声を反映させた製品開発やマーケティング戦略を構築することで、信頼を深めることもできるだろう。

 ステマを防止し消費者との信頼関係を構築するためには、透明性を保ちながらも消費者が求める本物の情報を提供することが鍵となる。その取り組みが企業の長期的な成長とブランド価値の向上につながるのだ。

 チョコザップが指摘されたステマ問題は、単なる広告表示の不透明性にとどまらず、企業と消費者との信頼関係の再定義を促す契機となった。

 ガイドラインを守ることはもちろん重要であるが、企業が取るべき本質的なアプローチは、消費者に対して誠実であり続けることである。口コミやインフルエンサーの推薦が持つ力を正しく理解し、消費者に対して真実を伝えることで、企業は長期的に信頼される存在となるだろう。企業はステマを防止し、消費者との信頼関係を強化するための新たなアプローチを模索する必要がある。

 消費者は単なる広告ではなく、本物の情報を求めている。企業がその期待に応えることで、より強固なブランド価値を築けるだろう。

金森努(かなもり・つとむ)

有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師

金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。

2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。大学でマーケティングを学び、コールセンターに入社。数万件の「本当の顧客の生の声」に触れ、「この人はナゼこんなコトを聞いてくるんだろう」と消費者行動に興味を覚え、深くマーケティングに踏み込む。(日本消費者行動研究学会学術会員)。

コンサルティング会社・広告会社(電通ワンダーマン)を経て、2005年に独立。30年以上、マーケティングの“現場”で活動している「マーケティング職人」。マーケティングコンサルタントとして、B to B・Cを問わず、IT・通信、自動車・電機・食品・家庭用品メーカー、金融会社、生損保、自動車販売、ECなど、幅広い業種に対応し、新規事業・新商品開発・販売計画・販売のテコ入れ案・コミュニケーションプランの策定等、幅広くマーケティング業務の支援を行っている。講師としても業種を問わず、年間100コマ以上の企業研修に登壇。コンサルティング経験を元に企業課題に合わせた研修のオリジナルのコンテンツやカリキュラムを提供。研修によってマーケティングを「知っている」だけではなく、「業務に生かせるようになること」にこだわっている。執筆は、「初めてでもマーケティングが楽しく体系的に学べる本」をテーマに10数冊刊行。「3訂版 図解よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)など。


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