転職市場では40代を中心とした、即戦力となり得るミドル層の採用を強化する動きが強まっています。しかし労働力不足が深刻化する中、人材獲得競争はこれまでになく白熱。多くの企業が苦戦を強いられているのが現状です。
ミドル層の採用で「優秀で申し分ないけれど、転職回数が多いのがネックだな……」といった事態はしばしば起きます。こうしたとき、どのようなポイントを踏まえて考えるべきなのでしょうか。
前編「ミドルの採用、競争が激化 苦戦する企業の『3つの共通項』とは」に続き、後編となる今回は、転職などにまつわるデータも用いてミドル層の特徴、またそれを踏まえた採用面接のポイントを解説します。
新商材の販売開始を前に、専門商社のC社は、営業部隊を統括できる人材を探していました。C社は新型コロナの感染拡大を受け、業績が著しく悪化。生き残りをかけて開発した新商材であるため、採用における希望条件は高く、以下を必須経験として挙げていました。
一方、これまで金融業界で営業職を続けてきたDさんは、もっとやりがいのある仕事にチャレンジしたいという思いが芽生え、転職を検討していました。
C社はDさん職務経歴書を確認し、営業とマネジメント経験は申し分ないとの判断でしたが「業界経験者でないこと」そして「5回転職していること」が懸念材料となり、一度は面接を見送りました。しかし、新商材の販売開始が控えているという時間的制約や、Dさんのビジネススキルに関する高い評価を理由に転職エージェントから再プッシュがあり、面接してみることに。
面接を通じC社は、Dさんの課題の見つけ方や乗り越え方を含むこれまでの仕事の進め方、周囲との関係性の構築方法などを知り、Dさんの汎用性の高いビジネススキルに驚きました。また、毎回チャレンジ精神を持って転職し、さまざまな経験を積み重ねてきたことも知りました。
結果C社は「幅広い営業チャネルの開拓」「営業戦略の立案・実行実績の豊富さ」「営業組織づくり」など、営業部隊の責任者として必要な経験を豊富に有していることから、業界未経験であっても周囲を巻き込みながら新商材を売ってくれるだろうという期待のもと、Dさんの採用を決めました。
職務経歴書のみで判断していれば、C社はDさんを採用することはなかったでしょう。しかしC社は面接で、職務経歴書からは読み取れないDさんの汎用性の高いビジネススキルに加え、当初懸念材料として挙がっていた「転職回数の多さ」については、前向きな転職を通じ積み重ねてきたさまざまな経験があることを理解し、採用を決めました。
「転職回数」については、回数の多さから定着性を懸念するケースが多いのが実態です。しかし、採用背景や事業フェーズを踏まえた上で、いかに環境の変化に適応し、早期に立ち上がれるかを重要な論点とするならば、回数の多さは変化適応力という強みとして捉えられます。
「ならば、面接で具体的にどのようにスキルや経験を判断したらいいのだろう」と思った人も多いのではないでしょうか。
実は、ミドル層採用の面接現場も書類選考と同様に、求めるスキルや経験の有無を確認する“スキルジャッジ”の場としての側面が強く、企業が求める要素と近しいものを持つ候補者であるにもかかわらず、それらを引き出すようなコミュニケーションが取れていないケースが散見されます。
この事実を踏まえ、ここからは、求めるスキルや経験を引き出すために理解すべきミドル層の特徴である「キャリア観」と「自己開示の深さ」を解説したうえで、それを踏まえた採用面接のポイントをお伝えしたいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング