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アイドルフェス仕掛け人に聞く コロナ禍明けのライブ・エンタメの展望市場のパラダイムシフト(2/3 ページ)

» 2024年09月07日 08時00分 公開
[柳澤昭浩ITmedia]

プロモーション戦略の進化とSNSの役割

 現代のアイドルフェスにおいて、SNSを活用したプロモーションは欠かせない要素である。特に、TikTokやYouTubeなど若年層に人気のあるSNSは、アイドルプロモーションの主戦場となっていて、これらのプラットフォームを活用することで、広範なファン層にリーチしている。橋元氏は「プロモーションの中心はTikTokやYouTubeだが、イベント広報には依然としてX(旧Twitter)に優位性がある」と話す。各SNSがそれぞれ異なる役割を果たしている点に注目している。

 @JAM EXPOでは、ファンマーケティングを強化するため、月額500円の有料会員制度を導入した。この制度では、会員限定のコンテンツや優先チケット販売を提供し、ファンとの関係を強化している。この仕組みによって、ファンのLTVを向上させ、イベントの収益を安定させるだけでなく、ファンとの長期的な関係構築を狙う。

 ファンマーケティングの目的は、単なるチケット販売や商品購入にとどまらず、ファンがブランドやイベントに感じる愛着を深め、継続的な支援を得ることだ。@JAM EXPOではこの手法を駆使し、ファンに対してより深い関与を促すための取り組みを実行している。ファンはイベントを単なる一度の体験とせず、継続的に参加し、ブランドやアーティストとのつながりを強められるのだ。

 さらに@JAM EXPOでは、データドリブンなマーケティングを活用している。チケット購入者の基本属性データや、SNSでの行動データを分析し、ターゲット層に対してより効果的なプロモーションを展開。これにより、ファン層に対してよりパーソナライズされたアプローチが可能となり、プロモーション効果を最大化する構えだ。

@JAM EXPOでは月額500円の有料会員制度を導入した

供給過多のアイドル市場におけるブランディング戦略

 現在、アイドルシーンは供給過多の状態にある。都内だけでも3000以上ものアイドルグループが活動していると言われ、対バンライブなど複数グループが参加するイベントが毎週末に開催されているようだ。平日や日中にも連日イベントが開催され、業界全体の競争は激化している。このような状況では、各グループやフェスがいかにして差別化を図り、独自のブランドを築くかが重要な課題となる。

 @JAM EXPOでは、他のフェスとの差別化を図るため、アイドルグループ同士のコラボレーションを積極的に展開している。今年は26のコラボ企画が予定されていて、ファンに新たな驚きと体験を提供することを目指す。2025年初頭のライブを最後にアイドルグループとしての活動を終える「でんぱ組.inc」は、@JAM EXPOとの長年の関係を通じ、特別な体験を提供する予定だ。このような特別企画は、既存のファン層だけでなく、新しいファン層を引きつける重要な施策でもある。

 フェス市場の競争が激化する中で、各フェスはそれぞれ異なるブランディングを強化している。@JAM EXPOも、アイドルシーンにおける独自の存在感を維持しつつ、ファンとの深い関係を築くためにファンマーケティングの手法を活用し、今後も成長を続けることが期待されている。

2025年初頭のライブを最後にアイドルグループとしての活動を終える「でんぱ組.inc

アイドルフェスの未来と新たなパラダイムシフト

 開催10回目を迎える@JAM EXPOは、アイドルシーンにおける未来を見据えた「新たなパラダイムシフト」を示すイベントだ。橋元氏は「今年はキャスティングに苦戦したが、コラボや特別企画を多く取り入れたことで、ファンにとって特別な体験を提供できる」と話す。

 この10年を振り返り、アイドル業界全体を見ると、@JAM EXPOがスタートした2014年には地方のご当地アイドルが活況を呈していた一方、現在では都内にアイドルグループが集中し、競争がますます激化しているという。2024年で10年一区切りを迎える@JAM EXPOでは、2025年以降に向けた新たなステージに進むため、幅広い層へのアプローチをとる予定だ。

 特に、ライト層といわれる新規ファン層を取り込むことや、既存ファン層のロイヤルティー維持が重要な課題となっている。今年は、業界全体におけるパラダイムシフトが進行する中、その未来を見据えた試金石の年ともいえるだろう。今後、アイドルシーンがさらに活況を迎えるために、@JAM EXPOがどのように進化し、新たな時代に適応していくかが注目される。

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