コロナ禍によってライブ・エンタテインメント市場は壊滅的な影響を受け続けている。ぴあ総研は「2020年の音楽フェス市場は98%が消失した」との調査結果を発表した。数多くの音楽フェスが中止や開催規模を縮小したため、20年の音楽ポップスフェスの市場規模は、前年比97.9%減の6.9億円へと激減。動員数も、9.3万人(前年比96.8%減)と大きく落ち込んでいる。
そんな中、奮闘しているのがポップカルチャーフェス「@JAM」の総合プロデューサーを務める橋元恵一さんだ。橋元さんは8月27、28、29日の3日間、横浜アリーナで開催したアイドルフェス「@JAM EXPO 2020-2021」の総合プロデューサーを務めた。そんな@JAM EXPOも当初は赤字続きだったという。
インタビューの後編では、4年連続して赤字だった@JAM EXPOをいかにして黒字化させたのか。そして、コロナ禍のアイドルフェスへの影響、ライブ・エンタテイメントビジネスの今後を聞いた。
――この10年間で「@JAM」は、日本有数のアイドルフェスになりました。最も大変だった時期はいつですか?
2017年でしょうか。13年までは2000人規模の会場でのイベントだったので、それほど利益も大きくない興行を続けていました。14年に初めてフェスという形態のイベントに取り組みました。事業規模は億単位になっていましたから、4年目は勝負の年でした。フェスとしては盛り上がりを見せた一方、興行としては失敗し、4年連続の赤字になってしまいました。
――イベントとして成功したのに興行として失敗。何が原因だったと考えますか?
やりたいことを詰め込み、ユーザーには評価を得た一方で、やりたいことには無駄も多かったのだと反省しました。
私は、もともと数字重視の人間ではなく、ビジネス的に勝ちに行ったかというと、結果そうではなかったのだと思います。思いとか勢いといったものを信条としてきた人間で、良いものを作れば評価されると思っていました。4年連続の失敗によって根拠に基づかない思いだけではだめだということを理解しました。いま思い起こすと冷静な分析に基づいて取り組んでいなかったのだと思います。
――その状況で4年連続の赤字になるわけですね。
例えば、1億円かけて準備に準備を重ねてきても、集客できずに5000万円分しか収入が得られなければ、会社が5000万円を支払って終わるというビジネスです。私がそれまでやってきた仕事は、自分がやった仕事には多かれ少なかれ対価をもらえるビジネスだったので、そもそもの考え方自体が違います。
当時の社長は、新しい提案、新しいフェスなど、そういうもの自体はすぐに勝てるものではく、事業として成功するかしないかは、3年をめどに評価する認識だったと思います。もちろん3年間赤字を出し続ければ怒られはするものの、比較的我慢してもらっていました。ただ、4年目の赤字が出たときに「もうないな」と自分も思いましたし、社長もそう言うと思ったのが17年です。
――ところがそうじゃなかった?
そうなんです。毎年アベレージで1000万円、4年間で約4000万円の赤字でした。初めからやりたいことを詰め込むのではなく、やりたいことを1000万円削ればイーブンになり、事業規模を見直せば、ちゃんと利益も出せる可能性もあるだろうと言われました。
40代半ばになっていうのも変なのですが、初めてフェスを数字ベースで捉え始めました。17年までは、思いさえあれば通じると思っていたのが、ロジカルに数字にこだわって作ったのが18年です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング