DIC川村記念美術館は本当に「バブル時代の負の遺産」なのか? 「物言う株主」の是非(2/3 ページ)

» 2024年09月12日 12時00分 公開
[古田拓也ITmedia]

企業が美術館を経営する意義

 企業が美術館を運営することは文化的貢献のみならず、地域振興、観光振興としての役割も果たしている。その意義は大きい。

 一方で株主が美術館運営を「売り上げに直結しない施策」だとして、やめるよう要求することは、一概に悪と断ずることもできない。

 株主の視点から見れば、企業に対してリソースを効率的に使い、利益の最大化を求めるのは当然だ。そのため、利益向上に直接寄与しない事業に資金を投じることは、短期的には無駄と見なされる可能性がある。

株主の視点から見れば、企業に対して利益の最大化を求めるのは当然ともいえる(写真はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 特に経済が不安定な時期や、企業の業績が悪化している場合、こうした支出を削減することで、企業の財務状態を改善し、株主価値を守ることにつながるのは事実だ。

 しかしこのような短期的な利益追求が、企業の長期的なブランド価値や社会的評価を損なうリスクがある点を忘れてはならない。

 企業が短期的な利益だけを追求する姿勢を示すと、社会的責任や倫理的な価値観に対する信頼を損なうことにつながる。これにより、中長期的な成長が危ぶまれる可能性もある。

 美術館の運営は、他社との差別化を図るブランド構築に寄与し、長期的には競争優位性をもたらしうる。短期的なコスト削減のためにこの無形の利益を捨てることはリスクだ。

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