大正製薬は清涼飲料水のレシピ設計で豊富な経験とノウハウを持っているが、アイススラリーをつくるにあたっては成分の配合に繊細さが求められ、簡単とはいかなかった。しかも、アイススラリーをつくるのは初めてだったので、不慣れなところもあり、つくった試作はゆうに100パターンを超えた。
開発では容器の選定もポイントになった。もみほぐしやすいものでないと微細な氷が溶けた成分と均一に混ざらないからである。
ところで、なぜ凍らせた清涼飲料水をもみほぐせるのか? その理由を山本氏に尋ねてみた。
「ミネラルなど各種成分の配合量により実現しています。溶け込んでいる成分が多いと凍りにくく、逆に少ないとカチカチに凍ってしまいます」
氷の結晶と結晶の間にある成分が溶けることで、もみほぐして細かくなった氷が均一に混ざり飲みやすくなる。この状態になって初めてアイススラリーと呼べる状態になるわけである。
冷蔵庫で冷やした「リポビタンアイススラリー」(左)と凍らせたものを常温で15分ほど置いてからもみほぐした「リポビタンアイススラリー」。凍らせたものをもみほぐしたものには、無数の微細な氷が液中に混ざっているのが目視できる採用した容器は口栓付きの薄い飲料用パウチ。現在のものを選んだポイントは大きさと薄さにあった。当初はゼリー飲料などでよく使われている背が低くて厚みのある口栓付き飲料用パウチの採用を考えていた。しかし、実際に使ってみるともみづらくなかなか溶けなかった。
「社内で検証したときは『中心部が溶けにくい』という声がすごく多かったです」と振り返る山本氏。現在の容器と同じ条件で比較したとき、溶けるまでに10分ほど長くかかった。結局、容器は量も含めて10パターンほど検証し、現在のものに決めた。
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