名刺の裏に金額を書いて「せーの」で出してきた クルマ買い取りの“入札制度”が面白い高根英幸 「クルマのミライ」(4/5 ページ)

» 2024年09月20日 05時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

買い取り業者が繰り広げる“勝負”とは

 「今、この場で決めてくれるんでしたら上司に掛け合って、ギリギリの金額を提示させてもらいますけど、どうでしょうか」と、1人の担当者が筆者に持ちかけてきたのだ。すると残り2人もこちらを見てうなずいている。どうやら、彼らにとっては毎度おなじみの状況で、それぞれ一発勝負の価格を提示して、一番高い価格の業者と契約してもらうのがルールらしい。

宅配業で引き合いがあり、大きなキズやへこみなどがなく、エアコンも利くことが、17万キロ走行しても値段が付いた理由らしい

 このように複数業者による同時査定を行う場合、誰か1人が仕切り役となって価格交渉の流れを説明し、オーナーに了承してもらう流れになる。というのも「後から別の業者が来るので契約は後で」ということになると、とりあえずの価格提示しかできないが、その場で契約することを約束してもらえば上司に掛け合って限界の価格を提示できるからだ。

 いくつもの業者が一番早い時間にこぞってやってきたのは、そうした契約競争に参加するためだった。じっくりとクルマのコンディションをチェックした担当者たちは、それぞれ上司と相談して金額を決めたようだ。

 そうやって買い取り金額を決定した担当者は自分の名刺の裏に金額を記入。それを同時にオーナーに提示する一発勝負の入札である。買い取り業者の担当者たちは、毎日こんな勝負を繰り返しているらしい。

名刺の裏側に買い取り価格を書いて一斉に出し、一番高い価格を提示した業者が契約する権利を獲得する。今の買い取り業者の間で広まりつつある同時査定のルールらしい(一部画像加工)

 「実は午前中にも別のところで買い取り査定を行ったんですけど、わずか400円余りの金額差で負けました」と1人の担当者が打ち明ける。数十万円の買い取り価格で数百円差は、かなりシビアな競りとなったことが分かる。買い取り業者でも車種やカテゴリーによって強みのある部分が違うので、毎回同じ業者が競り勝つわけではないようだ。

 一発勝負の結果、軽バンには9万2000円もの値段が付いた。宅配業など物流業界では人気の車両だけに、いくら走っていてもクルマとして機能すれば値段は付くそうだ。

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