便利な手段はもっと便利な手段に置き換えられる。夜行列車の需要が低下した理由は、便利ではなくなったからだ。戦前戦後は主な移動手段が鉄道だけだったし、列車の速度も遅いから、夜通し走る必要があった。つまり“しかたなく夜間運行する列車”だった。
夜行列車を存続させるために、国鉄は2つの方法を採った。低価格化と高付加価値化だ。夜行快速列車を増やす一方で、寝台列車の居住性を向上した。「星の寝台特急」というキャッチフレーズのもと、三段寝台を二段寝台に、個室も増やし、食堂車も備えた。
ところが、もっと便利な移動手段が現れた。新幹線網の拡大と、2000年の航空自由化だ。新規参入航空会社と既存航空会社が競争し、国内線航空券の運賃が下がった。ほぼ同時期にビジネスホテルが増えた。1泊当たり5000円もあれば、清潔で、ユニットバス付きのホテルに泊まれる。2004年にアパホテルは合計室数が1万室を超え、2005年に東横インは100店舗を超えた。その後の大規模展開はご存じの通りだ。
寝台特急の寝台料金は最も安いB寝台で6500円だった。座席列車に比べると定員が少ないから、このくらいの追加料金を取らないと採算が合わない。それでもホテルに比べて設備は見劣りする。夜行列車で行くくらいなら、前日に移動して一泊したほうがいい。
一方で、夜行快速列車のライバルは高速夜行路線バスだ。居住性は列車に劣るけれども、格安で「夜行便の有効時間帯」にピッタリはまる。
夜行列車が廃れた理由は、「もうからない」「寝台料金は高くて不評」「車両が老朽化しても、もうからないから新車をつくれない」、そして「夜間の保守作業に支障する」だった。
しかし、特急「アルプス」がそれらを覆す。「座席列車の特急化で日中の特急と同じ収入になる」「三連休前日という日を選べば、夜間も運行可能」と実証して見せた。
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