11月1日から「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、通称「フリーランス新法」が施行された。
この法律は働き方が多様化する社会の中で、立場上不利な側に追いやられやすい下請け事業者やフリーランサーの取引条件を公正に保つとともに、より安心して働ける環境を整備することを目的としている。
フリーランサーは一般的な労働基準法や下請法の対象外となりやすく、これまで契約内容の曖昧さや報酬支払いの遅延など、さまざまな問題が発生してきた。
直近でもVTuber事務所「ホロライブ」を運営するカバー(東京都港区)で、下請け事業者に対して無償での作業のやり直しを繰り返し要求していたことが明らかになったばかりだ。同社は2022年から2023年にかけて、23の下請け事業者に計243回にわたり無償の修正作業を行わせており、下請法に違反していると公正取引委員会に判断された。
この種の下請法違反は、会社の体質や商慣習によって慢性化しやすい。カバーはこの期間以外にも同種の違反を起こしており、報道された事案はあくまで氷山の一角にすぎないと考えられる。
そして、摘発されていないだけで、同様の違反を日常的に行っている企業はカバー以外にもあるはずだ。
今回の法施行は、こうした背景を受け取引適正化を目指す動きとしてみるべきだろう。中には企業側も「ウッカリ違反」してしまう可能性がある項目もある。罰金などの罰則もあるため詳細をチェックしていきたい。
まずは発注側の企業が順守すべきポイントを確認していこう。
新法では、企業がフリーランス労働者に対して守るべき具体的な項目が明確に規定されている。
具体的には、口約束ではなく「契約内容の明示」が義務付けられた。業務内容、報酬、支払期日といった重要事項を契約書などに明記し証跡を残しておく必要がある。報酬の支払い遅延や不当な条件変更を防ぐことが、この新たな規制の目的だ。
また、修正作業に関しても明確なルールを示し、リテイク時の追加料金について事前に当事者間で合意する対応も必要だ。これにより過度な「やり直し」要求を避けることが期待される。
フリーランサーの中には経験が浅いために、リテイク時の追加料金や知的財産権などについて確認しないまま契約を進めてしまう人もいるかもしれない。しかし、聞かれなかったからといって企業側が好きに解釈してしまっては、違法行為に当たる可能性がある。
万が一フリーランス新報の罰則を受けたり、フリーランサー側が契約書の提示を希望したことをもって仕返し的に報酬を減額したり、不利益になるような変更を加えたりすると、それもフリーランス新法違反にあたる。
公正取引委員会の調査を受けた場合、違反事業者の社名が報道を通じて世間に広く拡散されるリスクが生まれる。経営を支えるフリーランサーや下請け事業者、そして顧客の信頼を損ない、業績や株価を下落させる事態すら招きかねない。
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