AIには答えられない「問い」がある――社会人が磨くべき「3つの能力」とは?問いの設定力(3/4 ページ)

» 2024年11月05日 07時00分 公開
[鳥潟幸志ITmedia]

AIの登場は「エリート」の定義をどう変えた?

 ここまで、AIが答えを出せる「問い」と、出せない「問い」の違いについて解説してきました。まだまだAIが得意ではない領域は確かに存在しますが、技術が目まぐるしい進化を遂げる現在は「テクノロジーが人間の“考える”という作業の一部を代替していく状態」に差し掛かっています。

 こうした状態を「AFTER AI時代」と位置づけ、AIの得意/不得意領域と、AFTER AI時代に社会人に求められる能力との関係性について考えてみたいと思います。

 今の私たちを取り巻く環境と、これまでのテクノロジーの進化の経緯を、産業革命の歴史と照らし合わせ、改めて確認してみます。

BEFORE AI時代

第一次産業革命(18世紀後半)

 蒸気機関の登場により、手作業中心の生産から機械による大量生産へと移行。これにより、繊維産業などが劇的に変化し、物流や交通の効率化が進みました。

第二次産業革命(19世紀後半〜20世紀初頭)

 電力の普及により、工場生産が一層効率化。大量生産システムが確立され、フォードの自動化された流れ作業は、自動車産業などに革新をもたらしたと同時に、電話や電報の発明が、コミュニケーションのスピードを飛躍的に高めました。

第三次産業革命(20世紀後半)

 コンピュータとインターネットの普及により、情報の処理能力と共有速度が格段に向上。これにより、データの分析、文書の作成、通信などの業務が大きく効率化され、ビジネスのグローバル化が加速しました。

AFTER AI時代

第四次産業革命(現在進行中)

 AI、ロボティクス、ビッグデータの統合により、これまでの人間の労働をさらに自動化し、効率化。サイバーフィジカルシステムやIoTによるスマート工場は、製造業をはじめとする多くの分野で、人間の作業を機械に置き換え、新たなビジネスモデルを生み出しています。

 このように時代が変わる中、私たちを取り巻く環境や、そこで求められる力はどのように変わっていくのでしょうか。

 BEFORE AI時代の事業環境では、組織や上司が設定した課題や目的を正確かつスピーディに解決することが重視され、評価されてきました。営業目標を達成する、業務処理をミスなく遂行するなど、日常に溢(あふ)れる作業の多くには「正解」が存在し、そこにいち早くたどり着ける人がエリートとされてきました。それは、大量生産・大量消費時代のビジネス環境には最適だったのかもしれません。

 BEFORE AI時代に求められているスキルは「外から与えられた条件に沿って、答えを生み出す力」であり、「既にあるものを解釈していく力」です。そして、これはまさにAIが得意とする領域です。

 しかし、AFTER AI時代では状況が異なります。変化が激しく、そもそも唯一の正解が存在しない、もしくは課題を正しく特定することすら難しい状況では、誰かに与えられた課題を解決するだけの能力は、意味をなしません。指示待ち人間として評価が下がっていくだけでなく、その解決能力そのものが機械に代替されてしまうリスクがあります。

 AFTER AI時代で求められているスキルは、問いや行く先を「自ら生み出す力」であり、「課題を設定して、意思決定していく力」です。これは、AIが苦手とする領域なのです。

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