平成→令和で「管理職」に求められるスキルはどう変化した? 役割はさらに複雑化……(1/2 ページ)

» 2024年04月12日 08時30分 公開
[武田 正行ITmedia]

 「管理職」と聞いて、皆さんはどのような印象をお持ちですか?

 もし管理職になったとしら、優秀な部下とともにチームの目標を達成し、時間的にも余裕のある状態を想像しますか? それとも、プレイングマネジャーとして現場の業務も担いながら、自身の目標達成だけではなくチーム全体の目標達成、部下の勤怠の管理、部下の育成など、さまざまなタスクにより時間に追われている状態を想像しますか?

 多くの方は後者を想像されたのではないでしょうか。産業能率大学の調査においてもプレーヤーとしての時間が全くないという管理職(課長)の割合は5.1%にとどまるという結果も出ています。

 ここ20年間、平成と令和の間でも実際の働き方や働き手の意識が大きく変わってきました。それに伴い、管理職に求められるスキルも大きく変化しています。今回はそのような「管理職」に求められるスキルの過去と現在について見ていきたいと思います。

懐かしき「平成」の管理職に求められていたこと

 20年前の平成時代の中盤は、新入社員の採用を控える企業が増えており、労働の長時間化で過重な労働も増加。いわゆる「ブラック企業」という言葉も一部で認知されるようになってきました。そして、「過労死」の件数も年々増加しており、実際の現場では目の前の目標を達成するために、現在であればハラスメントになってしまうようなマネジメントがしばしば見受けられていました。20年前までは成果が出るまで労働することが普通の時代だったのだと思います。

 一方で令和になると政府は「働き方改革」を打ち出しました。その目的の中には「長時間労働の是正」「多様で柔軟な働き方の実現」「雇用形態にかかわらない公平な待遇の確保」といったものがあります。長時間労働の原因の一つでもある「サービス残業」の是正や労働時間法制の改革もあり、特に労働時間に関する考え方は大きく変化しました。

 また、コロナウイルスの影響も相まってフレックスタイム制度やリモートワークなど、個人個人のライフスタイルに合わせた多様で柔軟な働き方の導入も進みました。他にも有期雇用、アルバイトや派遣労働者などのいわゆる非正規労働者に対する労働条件の公平な待遇の確保も強化され、私たちの働き方に対する意識も大きく変化していきました。現代は限られた労働時間の中でいかに成果を出せるのかを考える時代だと思います。

この20年間で働き方は大きく変化した(画像ACより)

 このように働き方の常識が大きく変化する中で、管理職に求められる役割やスキルも大きく変化しています。

 ではまず、平成の管理職について考えてみましょう。20年前の管理職には、どんなことが求められていたのでしょうか?

 それは会社で設定された目標をいかにして達成するのか。その目標達成に向けて、いかに部下を自分の思った通りにコントロールし、成果を出させることができるのかということだったと思います。そのために「命令」や「統制」といった一方的なコミュニケーションが取られ、また自分のやり方を押し付けたり、成果が出るまで長時間労働を行わせたり、部下の行動管理をしたり……。そして管理職自身もワークライフバランスなどはお構いなしに労働していたと思います。

 今も昔も管理職に求められているのは「成果をあげていくこと」に変わりはありません。そのために会社と現場との「結節点」になって、経営者の思いやビジョンを十分に理解し、それを漏れることなく正確に伝えていくことが重要です。

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