AFTER AI時代で求められているスキルは「自ら生み出す力」と話しましたが、私は具体的に「問いの設定力」「決める力」「リーダーシップ」の3つの力であると定義しています。それぞれの力について説明していきます。
正解を発見するのではなく、そもそも何を解決するべきなのか、何を理想とするべきなのかといった、問いを自ら設定する能力です。適切なタイミングで、適切な順番で、適切な問いを設定し、思考を促し行動できる人材が、これからの社会では求められると考えられます。
上司からの指示を仰ぐのではなく、前線にいる人が観察をして、意思決定し、自分の責任の下で行動する能力です。生成AIを活用することで複数の選択肢やもっともらしい回答を瞬時に得ることが可能になりますが、その内容を取捨選択し判断するのは、あくまで私たち人間なのです。
リーダーを支援するフォロワーシップではなく、現場に近いスタッフが状況判断し、方針を示し、周囲を動かす能力です。AFTER AIの時代には、管理職の立場にない人も含めて、全てのビジネスパーソンにリーダーシップが求められるようになると私は考えています。
そして、これら3つの能力に大きな影響を与えるのが「自分らしさに沿って生きる力」です。これまでの社会では組織のルールに従いプロセスに従順で、期待された課題解決をし続けること、つまり、集団の“らしさ”に沿って生きることが評価されてきました。
しかし、組織の論理を重視するあまり、道徳的・倫理的に誤った取り組みすら制御ができなくなる事態に発展するリスクがあります。企業の不正が明るみに出るたびに「社内で異論を唱える雰囲気ではなかった」という社員の声を耳にすることがあるのではないでしょうか。
また、一人一人の人生においても、自分以外の人の“ものさし”を持ち続けた先に幸せはあるのでしょうか? 人生の充実感は得られるのでしょうか?
私は今一度、集団の“らしさ”に沿って行動することの是非を問う必要に迫られていると感じています。
良い問いとは自分の意思や哲学が反映されているものであり、良い決断とは、リスクをとって最後は自分の信念に沿って決めるものです。そして、良いリーダーシップとは、自分の立場を明確にして発信し、周囲を動かすようなものです。その時々で、また、人生において、納得感のある回答を引き出せるのは自分自身。自分で決めたからこそ、納得もできるし、その責任を負うこともできるのです。
“自分らしさ”を明らかにし、言動に反映していくのは、簡単なことではありません。しかし、これはAFTER AI時代に求められる「3つの能力」、つまり「問いの設定力」「決める力」「リーダーシップ」いずれにも影響する、重要なものです。
次回以降で、3つの能力それぞれの高め方、「自分らしさ」についての考え方など、詳しくお伝えします。
埼玉大学教育学部卒業。株式会社サイバーエージェントでインターネットマーケティングのコンサルタント経験を経て、デジタル・PR会社のビルコム株式会社の創業に参画。取締役COOとして新規事業開発、海外支社マネジメントなど経営全般に携わる。グロービス参画後は、社内のEdtech推進部門にて「GLOBIS 学び放題」の事業リーダーを務める。グロービス経営大学院や企業研修においてプログラムの講師なども担当。著書に『AIが答えを出せない問いの設定力』(クロスメディア・パブリッシング)がある。
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