2回目の挑戦に向けては、役員にアドバイスをもらったり、既存のカンパニー社長に相談したりした。幼少期から海外志向が強かった自身の思いとフィードバックを踏まえ、事業案に改善を加えていった。
「メンバーズとして価値が出せる、かつ収益が期待できる事業内容であることは重視しました。最初に見られるポイントなので。そこから提供するサービスの具体性やPLなどの詳細を詰めていきました」
役員に壁打ち相手になってもらい、事業案はもちろん、細かい数字の整合性や経営陣へのプレゼンについても教えを請うた。結果、現在のグローバルミングルカンパニーの原型が誕生した。海外向けECサイトの運営という越境ECに関する事業案だ。
満を持して事業計画書を提出したが、結果は再提出。
経営層はメンバーズの事業としてハマるという考えは持ちつつも、「継続性」と「既存カンパニーとの類似性」に懸念を示していた。すでにメンバーズ内には「国内向けECサイト専門カンパニー」が存在していたため、近藤さんの事業案は「それの海外版」としてみられた。既存カンパニー内に海外事業部として誕生させるのではなく、新たにカンパニーを設立する意味、つまり価値提供の部分を問われることになった。
「最終的には現在の形に落ち着きましたが、それまではコンサルの要素を入れたり、制作にも手を出したりとごちゃごちゃしていました。何度も出し直して、5回目でようやく仮合格をもらいましたが、すごく時間がかかりました」
最終合格の条件である3件のリードを獲得し、最初の提案から約1年半後にようやくカンパニー設立を達成した。5回の出し直しに加え、リード獲得という条件を加えられたにもかかわらず、なぜ諦めずに挑戦できたのか。
「自分にがっかりすることはもちろんあります。地頭がよくないので行動力しかないんです。それを私から取ってしまったら『ただの人』なわけで。だから『あなたにはもうできませんよ』と言われるまではやり続けようと思って、諦めるとかは考えないようにしていました。考えていたら会社辞めていたと思います」
カンパニー設立から約半年。支援企業数は2024年9月時点で5社に上る。近藤さんはここまでの軌跡を「『困っているところにきてくれた』とお礼を言ってくださるクライアントさんもいらっしゃって、会社を立てて支援できていることが嬉しいことです」と振り返る。
カンパニーの存続可否は四半期ごとに審査で決定する。事業継続への課題として、近藤さんは「認知度」を挙げる。
「設立したばかりのカンパニーであることに加え、そもそもメンバーズが海外支援業をしているという認識を持っているお客さまも多くないです。今後も認知拡大には力を入れます。また、この海外マーケティング市場は10年プレイヤーの企業も多いので、その中でいかに戦っていくかも考えて、飛躍的な成長につなげていきたいです」
国内市場の縮小が自明の日本において、今後国外に目を向ける企業は増えていくだろう。経済産業省の発表(参照:PDF)によると、2019年の世界の越境EC市場規模は100兆円超と推計されており、2026年には600兆円超にまで拡大すると予測されている。
大きく波打つ市場に小舟で乗り出したグローバルミングルカンパニーと28歳の船長が、いつか多くの船員と大型船を手にし、海外進出を狙う日本企業を先頭で率いる日が来るのかもしれない。
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