山田さんは、上司に「サウナ用の時計を開発したい」という旨を伝えたところ、GOサインが出たので、さっそく開発に着手した。当初は、若者に人気のリーズナブルな時計、いわゆる“チープカシオ”のバンドを取り外し、代わりに銭湯などでよく見かける「くるくるゴム付きのロッカーキー」を装着した。
試作品の見た目が斬新だったこともあって、周囲の評価はよかったものの、さすがにこのまま販売するのは難しい。温浴施設とのタイアップ商品であればアリかもしれないが、一般販売は厳しいという指摘が多かった。
次に考えたのは、デジタル時計である。時計と12分計を表示して、バンドは通常タイプのモノを装着した。この試作品が完成したあとに、消費者調査を実施する。デジタルがいいか、アナログがいいか。機能は多いほうがいいか、少ないほうがいいか。たくさんの人に話を聞いたところ、「アナログで、必要最低限の機能に絞ったほうがいい」という意見が多かった。
この結果を受け、アナログ仕様の表示にして、機能もシンプルに。バンドは通常のモノを装着していたが、「サウナを楽しむことや着脱のしやすさを考えて、銭湯などでよく見かけるカールバンド(くるくるゴム)を使いました」(山田さん)
サ時計の開発にあたって、G-SHOCKなどで培った技術を応用したわけだが、苦労した点もある。「高温と高湿に対応しなければいけない」ことだ。サウナの中で使えるようにするには、どうすればいいのか。「熱さ」については、耐熱電池を採用することによって、解決した(※)。
一方の高湿についてはどうか。「通常の樹脂を使うと、湿気がケースの中に入ってくるんですよね。透湿性の低い樹脂を採用することで、ケース内の曇りを抑えました」(山田さん)。
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