人手不足が深刻化し、採用難が進む中、企業は人材確保に向けてどのような手を打てばいいのか。求職者に選ばれる企業の特徴とは――。さまざまな事例を通じて、採用がうまく進む企業の特徴を明らかにする。
本連載の第5回では、賃金制度の見直しの重要性について解説しました。ただし、制度を見直したとしても、人手不足の深刻化に伴って採用競争が激化する中では、実際に賃金を上げなければ求職者を引きつけることは難しいと考えられます。
とはいえ、賃上げするための原資が不足している状況では、簡単には賃上げに踏み切れないでしょう。では、賃上げを実現した企業は、原資を生み出すためにどのような取り組みを行ったのでしょうか。社員やアルバイトの賃上げを果たした企業の事例を紹介します。
金融機関を経て、2011 年リクルート海外法人(中国)入社。グローバル採用事業『WORK IN JAPAN』のマネジャー、リクルートワークス研究所研究員などを経て、現在は労働市場に関するリサーチ業務に従事。経営学修士。
国会事務局での勤務の後、2019年、リクルートジョブズ(現リクルート)入社。ジョブズリサーチセンター研究員を経て、現職。
まずは、企業が抱える課題を整理してみましょう。賃上げの原資を生み出すにあたり、多くの企業にとって向き合わねばならないことは、大きく「経営の効率化」「売り上げの拡大」の2つです。
経営の効率化について、企業はどれくらい取り組んでいるのでしょうか。リクルートが2024年3月に行った「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査」では、「業務プロセス(生産性・品質)の改善・向上」について、対応の必要性を感じている事業責任者のうち、35.9%が「対応できていない」と回答しました。
「対応の必要性を感じている群」は、業務プロセス(生産性・品質)の改善・向上のための対応の必要性を「非常に感じている」「やや感じている」と回答した群。「対応できていない」は、「できていない」「あまりできていない」の計。「対応できている」は、「できている」「ややできている」の計(出所:リクルート「中小・中堅企業の事業課題・人材課題に関する調査」。グラフは「生産性向上を急ぐ企業、『経営企画」求人が2015年1-6月比10.0倍」のプレスリリースより』売り上げが上がれば賃上げが進みやすいことも、データに表れています。リクルートでは2024年3月、企業で人事評価・賃金制度などをめぐる業務の責任者や中心的な立場を担う3000人超にアンケート調査を実施しました。結果、査定昇給の昇給幅が大きい企業ほど、2年前と比べて売上高が増えた傾向が見てとれました。
査定で最高の評価を受けたときの昇給幅が「5%以上」と回答した企業では、「2年前と比べ、売上高が増加した」と回答した割合が、管理職層・非管理職層いずれも5割強に達しています。反対に、「2%未満」と回答した企業では、「2年前と比べ、売上高が減少した」「ほぼ横ばい」と回答した割合が、管理職層・非管理職層いずれも7割ほどを占めました。
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