原CEOは住友商事、初期のソフトバンク、米シリコングラフィックスに勤務したのち、2度の起業を経験。日本マイクロソフトの広告営業日本代表を経て、直近ではグーグル日本法人で執行役員営業本部長を歴任した。Beatrustを創業したのは、グーグル時代に日本企業の社内風土の課題をあらためて感じたことがきっかけだった。
「グーグル時代に大手企業のイノベーション活性化支援といったプロジェクトも担当していました。そのときに感じたのは、日本の大企業の風土が、自分が考えていた以上に保守的だったことです。特に人的資本経営では社内の組織を超えたオープンなコラボレーションや、それができる高い心理的安全性に基づいた挑戦を称賛していくような社内風土が必要になりますが、大企業の経営者にとってはまだまだ風土改革の優先順位が高くない状況でした。この状況を変えるお手伝いをしたいと思ったのが創業のきっかけです」
原CEOは、日米両国の企業で働いてきた経験から、日本の大企業はグローバルなタレントを十分に生かせていないと感じている。
「マイクロソフトやグーグルは、米国の本社がガバナンスを効かせていて、人事をはじめとする全ての制度を1つのシステムで運用しています。その結果、世界のどの拠点でも、同じ土俵で従業員の能力を生かせています。一方、日本の大企業は、国内と海外拠点を分けて考えているところがあるため、優秀なグローバルのタレントを十分に生かせていないのではないでしょうか? その原因は風土とインフラにあります。新たなテクノロジーを駆使したデジタルインフラを日本の大企業に提供することで、国境を超えたコラボレーションやイノベーションを起こしやすい社内風土に変革できると考えています」
Beatrustでは今後も生成AI の活用を進めていくことにしている。2025年には、新たな機能として「Beatrust Career」を提供する。これは従業員の自律的なキャリア形成を支援するもので、自分のスキルや経験から、次にチャレンジすべきジョブやプロジェクトがレコメンドされるほか、ロールモデルが自動的に複数提示されることで、キャリアアップのイメージがつかめるようになる。また、個人にパーソナライズされた社内研修や社外トレーニングとのマッチングや、社内公募や社内副業の活性化にも寄与できる。
原CEOは「社内の人材だけでは全てを賄いきれない時代にきている」として、将来的には企業を超えたタレントマッチングができるサービスを構想している。
「金融機関などからよく聞くのは、DXを進める際に社内の人材だけでは持続できず、かといってコンサル企業にアウトソーシングをすると、高額な費用がかかるといった悩みです。DXのように社内にノウハウが溜まりにくい分野については、今後は社外副業を活用するケースが増えてくると思っています。副業であれば採用するよりも受け入れるハードルが低くなります。また、副業する人も違う業界で経験を積むことができて、その経験を生かすことで自分が所属する組織にも貢献できます。これからの時代に合ったインフラとして、企業を超えたタレントコラボレーションのサービスを提供していきたいですね」
田中圭太郎(たなか けいたろう)
1973年生まれ。早稲田大学第一文学部東洋哲学専修卒。大分放送を経て2016年4月からフリーランス。雑誌・webで大学問題、教育、環境、労働、経済、メディア、パラリンピック、大相撲など幅広いテーマで執筆。著書に『パラリンピックと日本 知られざる60年史』(集英社)、『ルポ 大学崩壊』(ちくま新書・筑摩書房)。HPはhttp://tanakakeitaro.link/
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