さらにトランプ政権で新設される役職の「AIと仮想通貨の最高責任者」として、デビッド・サックス氏を指名した。サックス氏は、トランプ氏の側近になっているイーロン・マスク氏と同じ元ペイパルの起業家で、出身地も同じ南アフリカだ。サックス氏は、マスク氏が2022年にTwitter社を買収した際にも資金提供をした。
ちなみに、マスク氏とサックス氏はトランプ氏の選挙戦で、副大統領候補としてJ.D.バンス氏を強く推薦したという。バンス氏は大量にビットコインを所有しており、仮想通貨に明るい。
仮想通貨を強力に支持するマスク氏とサックス氏の2人は、トランプ氏に深く食い込んでおり、今後の政権運営でも仮想通貨推進を進言していくことは間違いない。トランプ氏はこう言っている。「仮想通貨の業界を嫌っている人よりも、業界を愛している人たちがルールを策定することになる」
ただ現実には、トランプ氏は自分や自分の周りにいる仮想通貨を推す仲間たちがもうけるために動いているようにも見える。トランプ氏が自分のビジネス的利益のために大統領という地位を最大限に利用しようとするのは今に始まったことではないが、2期目でもう再選を目指す必要がないことから、第1次政権以上にビジネス「ディール」(売買・取引)を重視する可能性がある。
もうすでに、トランプ氏の動きが利益相反に当たると批判する声も聞こえてくるが、第2次政権には仮想通貨のさらなる発展が期待できるかもしれない。ただ予測不能といわれるトランプ氏だけに、その動向からは目を離さない方がいいだろう。
山田敏弘
ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争』(文春新書)、『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。
Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル」
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