これを契機として、販売戦略も変えた。これまでは「お重でのおせちは多すぎるという単身世帯やシニア世代」をターゲットにしてきた。これを「具があまり好きではない、なじみがないと感じる、おせちを食べる機会が少なかった層、若年層」を加えることにした。若者でおせちを食べる人は減少傾向にあり、若い世代を取り込むことで市場の拡大を狙うのだ。将来に渡って食べ続けてもらうことを期待する。
データコムの調べによると30代までの層に、おせちを食べるかどうかを聞くと「おそらく食べる」が40.0%、「食べない」が35.9%、「食べる」が24.1%で、20代と30代の3人に1人はおせちを食べないという。おせちは、もはや作るものではなく「買うもの」に変化したことも一因だ。
そこで同社は「おせちのカジュアル化」を進めた。伝統的な品目に加え、正月に食べたいものを加えるというものだ。
盛り付けの例として、数の子、豚角煮、里いも煮などに加え、から揚げ、ソーセージ、大福、串だんごなどを合わせた「ハイブリッドおせち」、伊達巻、黒豆、栗きんとんにロールケーキ、プリン、ティラミスなど盛り付けた「おせち宝箱」などを提案している。
「私も若年層が好むおせちはどんなものなのか、あまり分かっていませんでした。今回の商品をみて、驚きと同時に『こういう世代なんだな』と感じました。商品開発の幅もより広がったと感じています。2026年はローストビーフのような肉系の商品も視野に入れていきたいと考えています」
前回のインタビューで、近藤本部長は「今回の150円商品の売れ行き次第ですが、質が伴う形であるならば200円、300円の商品も受け入れていただけるかもしれないと考えています」と答えていた。
今回はその戦略を実行した形だ。ただし、御蒲鉾のように良かれと思って実施したことが裏目に出る場合もある。それだけ消費者の心理は非常に複雑なのだ。「売り上げは前年比105%を目指す」としたものの、それが達成できるかどうかは、商品ラインアップと値段など顧客を満足させられるかどうかにかかっている。発売後、客がどのような消費行動を示すのか注目だ。
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