演劇の業界では、プレイヤーである俳優が、舞台演出をする側に回ることはそう珍しくない。俳優出身の演出家として、チームビルディングをする上で何を心掛けているのか。
「私は俳優でもあるので、演出を手掛ける上では、役者がベストなパフォーマンスを発揮するための環境作りを一番心掛けています。どうすれば役者全員を前に出すことができるのか。各キャラクターの見せどころや、やりがいをどうしたら作れるのか。そういうところを大事にして演出をしています」(ウチクリ氏)
俳優は脚本を読み、その人物を想像し、自分なりの意味づけをしなければならない。いわゆる役作りといわれるものだ。ウチクリ氏は演出家として、俳優たち一人ひとりの特性を見抜き、時には彼らに対して、役の意味を伝えたり、演技の方向性を示したりして、全体を構築していくのだ。
同時にビジネス面への配慮も必要となる。今回も『クリスマスキャロル』と同様に、「キャスト応援チップセット」を販売。10枚5000円から販売し、チップ4枚で一部のキャストとチェキ撮影ができるシステムを導入している。
「『クリスマスキャロル』では、ステージと観客席の間にはある種の壁がありました。『ブルーサンタクロース』では、その壁を取っ払って、役者が観客に話しかけてもいいし、観客も積極的に巻き込んで、劇場が一体となる演出を考えています。その一つが『チップ』です。観客はチップを事前に買うことで、客席に来た演者さんに渡すこともできるし、物販に使えるようにしています」(ウチクリ氏)
冒頭の堀江氏の独白シーンは圧巻だ。堀江氏自身の人生を投影したせりふが約12分間続く。堀江氏が鈴木おさむ氏に「俺が嫌なこと書けるの、あんただけでしょ」と依頼した真意が浮かぶ場面だ。ウチクリ氏も「『クリスマスキャロル』と比べて堀江さんの出番が5倍くらい増えている」と言い、堀江氏自身の負担が増す形になっていた。だが、堀江氏は一切の妥協なく役作りに挑んでいる。同時にプロデューサーとして『クリスマスキャロル』で得たノウハウを『ブルーサンタクロース』に応用した。
こうしたノウハウを、衣装やメークといった裏方のスタッフを集めて実際に形にしたのが、緑山(グリーンサンタ)役を務めたアシスタントプロデューサーの澤田拓郎氏だ。澤田氏に2.5次元のヒットの理由を聞くと「コロナ禍によってアニメを好きな層が、アニメを見尽くしたこともあると思う」と話す。
「今期のアニメ全部見ちゃったけど、あの好きだったアニメの『舞台をやっているらしいよ』と、演劇にも目を移すことになったのではないでしょうか。コロナ禍によって演劇自体を休まざるを得なかった期間にクリエイターが企画していたものが、その後どんどん出てきた。『進撃の巨人』が米ニューヨークで公演されたり、『刀剣乱舞』が人気だったり。クリエイターたちがコロナ禍に作ってきたものが花開いたのだと思います。お客さんたちも外に出られなかった分、演劇というものを知らなかったけど見てみようかなという機運にもなってきた」(澤田氏)
澤田氏も「演劇というスタイルそのものに変革を、という堀江さんの運動自体が素敵だと感じている」と話す。2時間も同じ席に座り、水も飲めない。そういった“呪縛”にとらわれた従来の観劇の在り方が、少しずつ変わっていくかもしれない。折しも2.5次元のブームの影響で、一般層の演劇の楽しみ方も変わろうとしているのだ。『ブルーサンタクロース』で新たな観劇スタイルが広まるかどうか、注目したい。
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