DAPは、人手では現実的に不可能なDX推進活動を、よりスムーズに行うためのものです。主な取り組みとしては、大きく2つあります。
1つ目は、社内のデジタルUXをデザインできるようにすること。2つ目は、問題の発見と解決におけるPDCAサイクルをデータドリブンで、かつ高速に回せるようにすることです。
社内の業務の全てがブラウザ上で完結するわけではありません。利用者はモバイルや、PCのデスクトップアプリを併用することが多いでしょう。
DAPは、それら社内のデジタルUX全体をカバーします。図のように、DAPは複数のSaaSシステムの上に存在し、そのさらに前にデジタルハブを配置し、利用者はそのデジタルハブに業務の相談をすることで、システムを意識せずに業務を遂行できるようになります。
また、SaaSとDAPのインターフェースも戦略的にデザインされています。
具体的には、データ定義やロジックの部分はSaaSのカスタマイズで吸収し、UXや正確なデータ入力を担保する部分はDAPに任せるという役割分担を行うことで、最近のトレンドの一つである「Fit to Standard」(業務に合わせてシステムを変更するのではなく、システムの標準に合わせて業務を遂行すること)にもつながります。
データに関してはこのように分けることで、意思決定に必要なデータを取得する仕組みと、スムーズかつ正確にデータを入力する仕組みが明確になるため、データドリブンな意思決定の基盤を築けます。利用者にシステムを意識させることなく、自社の業務プロセスに合った設計を目指せるのです。
IT部門やDX推進部門でDAPの存在が「当たり前」になれば、DX推進活動は下図のように変わります。
まず「データ」についてです。先述の通り、社内には数百のシステムがあり、定期的に利用状況をモニターされています。
ここでは、まずマクロ視点で問題のあるシステムや業務プロセスを発見します。次に、どのプロセス・どの画面で問題が発生しているのかを深掘りします。
さらに、利用者がその画面の中でどのように迷ったのか、困ったのかを知りたい場合、利用者がシステム操作した際に蓄積されている操作ログから動画を再構成し、まるで目の前で利用者がシステムを操作しているような様子を見て、具体的に問題を理解します。
次に「アクション」についてです。
当該システムの主要な業務テンプレートを利用します。この業務テンプレートは、過去に蓄積された知見を基に作られたものであり、課題、解決法、KPIへの影響などの内容が整理されています。それを参照しつつ、自社における解決策や向上目標を定義します。
例えば「2つのシステムを跨ぐあるプロセスの完了率がX割以上」「重要な項目の入力完了率がX割以上」といった具合です。このような定義を行いモニタリングすることで、問題の有無を把握できます。
また、業務テンプレートを自社業務にあわせてカスタマイズして、問題解決のためのガイダンスを構築、展開し、利用者がすぐに使える状態にします。こうした作業は、最短数時間から可能となります。
次に「エクスペリエンス」についてです。
エクスペリエンス展開後、実際に利用者がそのガイダンスを活用して業務を推進します。この内容は、先述した利用者側の様子に該当します。そして、管理者は、その結果を見て改善すべき点を特定し、サイクルを継続的に繰り返していきます。
誤解を恐れずに言えば、これまで多くの企業は「導入システムによって狙った効果が出ているか」よりも、「システムが動いているかどうか」に関心を持っていたように思います。
システムは正常に稼働していることが当然視され、止まったら厳しく責められるのが一般的であったため、やむを得ない面もあるかと思います。また、人員にも限りがあり、システムが実装されてからは「何か問題が発生したら対応する」という姿勢が主流でした。
しかし、DAPの導入により「導入システムによって狙った効果が出ているか」という視点でのシステム管理が可能となり、それに必要な機能が充実し、システマティックな推進ができるようになります。
また、SaaSが多く使われる現代でも、追加で改修が必要な場合は、外部に依頼することが一般的であるため、相応のコストやリードタイムが発生します。しかし、UX部分はDAPが担当することで、ノーコードツールを扱える自社の従業員が対応可能となり、場合によっては数日や数時間で修正できるようになります。
DAPは、別の言い方をすると、DXの効率化を可能にするソリューションとも言えるかもしれません。
この効果は、特に外部向けサイトにおいて大きな効果を発揮します。
ビジネス上、絶対に停止してはならないシステムの改修には、細心の注意を払って計画を徹底する必要があるため、リードタイムが長くなりがちです。しかし、季節的なキャンペーンや臨時のお知らせなどを実施したい場合もあるでしょう。このような場合、データ・ロジックとUXを分離することで、UX部分を迅速に修正することが可能となります。
デジタルの力を最大限引き出し、企業間競争における優位性に直結させるために、DAPの活用が大きく貢献します。他社と比較してシステムのポテンシャルを引き出すだけでなく、複数のシステムをまたぐ自社業務プロセスをデザインすることで、個別のシステムの足し算以上の効果を期待できます。
最終的には、ITへの投資対効果を最大化し、競合他社に比べてデジタルの力を効果的に活用することで、競争優位性の確立につながります。
これまで、類似の取り組みを別の手法で行ってきた企業もあるでしょう。DAP活用で、テクノロジーの力でEnd-to-Endで支援できるようになります。つまり「各部門のDXを進める活動」自体のDXを進めることが期待できます。
これからのIT部門がシステム導入だけでなく、ビジネスに必要な変革に貢献する役割を担うべきと共感していただけるのであれば、DAPはその実現をサポートする有効な手段となります。
利用者にとって、DAPの原点であるDASは「誰もが迷いやストレスなくシステムを使いこなせる」ものでした。一方、DAPは「誰もが迷いやストレスなく、システムを意識することなく業務を完遂できる」世界を目指すものです。本章では、その業務イメージの違いを描いてみました。
また、「変革」というキーワードを軸に、事業部門長やDX推進部門、IT部門、CDO、CIOの役割変化についても説明しました。特に、利用者を支えるDX推進部門・IT部門の在り方は、現在の姿とはかなり変わっているかもしれません。
しかし、このような姿こそが、変革促進を支える部門としての在り方であり、DAPはここに寄り添って「DXをDXするプラットフォーム」として普及するものと考えています。
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