多すぎる社内システムを「覚えなくてOK」に! DXをスムーズにする「DAP」で何ができるか【連載】日本企業のDXには「DAP」が欠けていた(1/2 ページ)

» 2024年12月17日 07時00分 公開
[小野真裕ITmedia]

著者プロフィール:小野 真裕

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WalkMe株式会社 代表取締役。1999年にNEC中央研究所にて研究者としてキャリアをスタート。その後、コンサルティング業界に転身し、アクセンチュアや日本IBMなどで活躍。日本IBMではコンサルティング部門のパートナーとして、AI&アナリティクスを駆使した戦略立案から実行支援まで、数多くのプロジェクトに従事。2019年11月にデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるテクノロジーソリューションであるWalkMeに参画し、現在は同社の代表として、日本企業のDX推進を牽引している。情報理工学博士。

著書に『日本のDXはなぜ不完全なままなのか 〜システムと人をつなぐ「DAP」というラストピース〜』(2024年6月26日発売、ダイヤモンド社)がある。


 前回の記事「どのシステムで、何するんだっけ? “SaaS多すぎ問題”を解決に導く『DAP』とは」では、DAPがアプローチする課題を挙げました。DAPは社内で利用するSaaSなどのサービスや、また社外の顧客向けアプリケーションサービスに対して、ガイドや操作の自動化、データ入力の適正化などの機能を持ちます。

 今回は、その課題を解決して実現される世界をイメージしてみましょう。DAPの活用で、あなたの会社や社内のDX推進は、どう変わるのでしょうか?

あなたの会社の「DX推進」は、どう変わる?

 DAPが目指す「誰もが迷いやストレスなく、システムを意識することなく業務を完遂できる」とは、どのような世界でしょうか。まずは利用者の目線で、業務がどう変わるのか想像してみましょう。

利用者は「〇〇のための手続きがしたい」と伝えれば、後は従うだけ

 例えば、あなたが結婚するとします。結婚は人生で何度も発生する事柄ではないので、社内でどのような手続きをすれば良いのか、ほとんどの方は知らないでしょう。

 現在は、イントラネットのポータルに掲載されている情報を探して、自分が取るべき手続きを確認し、必要なシステムにアクセスして、マニュアルを見ながら操作するというのが多くの会社のフローです。

 一方、DAPがある世界では、デスクトップ上に常に表示しているデジタルハブを呼び出し、「結婚」と検索窓に入力します。「結婚」に関連する手続きは多数ありますが、そのうちどれが自分に必要かをデジタルハブが判定するための対話が始まります。

 「名前は変わりますか?」「住所は変わりますか?」といった質問を通じて、デジタルハブは利用者の回答をもとに必要な手続きを特定し、その手続きを行うシステムに案内します。社内で結婚に伴う手続きを特定し、その手続きを行うシステムに案内します。社内で結婚に伴う手続きが5つある場合でも、そのうち3つだけ対応すればよいかもしれません。その判断もDAP側が行い、利用者に提示します。

 次に、SaaSなど多くのシステムでは、操作する場所はデスクトップからブラウザに移行します。デジタルハブは必要なシステムの画面まで利用者を誘導し、必要な入力項目についてミスがないよう支援します。一つの手続きが完了すると、次の残った手続きに移行します。

 このように、利用者は「結婚にまつわる社内手続きをしたい」という意図を伝えるだけで、必要なシステムやその操作方法を知らなくても、社内手続きが完了できるのです。また、別の例として、新入社員がPCを開いた瞬間から、ITセットアップやオンボーディングプログラムの案内を、DAPツールを通じて提供することも可能です。

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 ここまでは、利用者が能動的に業務プロセスを実施したい場合について述べました。反対に、会社側が利用者に特定のアクションを促したい場合もあるでしょう。

 その際には、管理者が指定したタイミングで、利用者のデスクトップ画面上に「人事評価の入力は今日までです。入力はこちらから」「営業週報は本日午後6時までに完了してください。入力はこちらから」などのポップアップを表示できます。ポップアップからは簡単に該当システムにアクセスでき、操作方法を知らずともスムーズに対応可能です。

 なお、ここまでは企業の社内業務の例を中心に説明しましたが、DAPは企業の外部向けサイトでもよく利用されています。

 この場合、企業が運営する複数のサイト間の導線を、単なるリンク以上に強力な送客手段として案内でき、サイト内では企業が意図する行動を訪問者に取ってもらうための強力なガイドも提供できます。

事業部門の「マインドや行動を変える」マネジメントが可能に

photo (提供:ゲッティイメージズ)

 自部門の変革を目指し、システムを利用した新しい戦略や現場のオペレーションを導入するとしましょう。

 まず、先述したように、必要なシステムを現場メンバーが使用できる状態にすることで、最低限のハードルは超えられます。

 しかし、操作マニュアルと業務マニュアルが存在するだけでは不十分です。真の変革にはシステムの操作方法に加えて、現場のマインドや行動を変える必要があります。

 例えば、競合に勝てるような営業活動や、データドリブンな意思決定ができる営業改革を想定してみましょう。

 営業担当者が顧客と初回コンタクトする際にAという資料を使用してほしい場合、システム上で訪問計画を立てたときに自動的にその資料が提案される。また、競合他社が出てきた際には、システム上で商談に競合他社情報を登録すると、競合対策に必要な情報が提示される、などです。

 こうした仕組みによって、現場メンバーの行動が、単にシステムを操作できるレベルを超えて、部門長が意図した通りのオペレーションが定着していきます。

 さらに、データドリブンな意思決定を行うためにデータ精度を高めることが求められるでしょう。例えば、ステージ変更に関して、必要な項目が満たされていればステージ変更を提案する、あるいはステージを上げる際に条件が自動でチェックされる仕組みです。これにより、部門長はより信頼性の高いデータに基づいてデータドリブンな意思決定ができます。

 商談のステージを更新する場合は、提案書の提出、契約条件の合意、または承認プロセスの完了など、特定の営業プロセスの達成が必要です。これらの条件が満たされれば、システムが自動的にステージ変更を提案する仕組みを導入することで、データの正確性と意思決定スピードの向上を見込めます。

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