居酒屋業界では、コロナを挟んでトップ企業が入れ替わっている。お気付きかもしれないが、さきほどの図表2では、鳥貴族を展開するエターナルホスピタリティーグループをあえて隠した。図表2改め、図表3では鳥貴族が一気に居酒屋としての存在感を拡大したことが分かる。
コロナを経て同業他社は、店舗数をおおむね2〜5割ほど減らしているのに対し、エターナルホスピタリティーグループは鳥貴族店舗だけみても5%減にとどめた。その上、フランチャイズ(FC)チェーンのやきとり大吉を傘下に入れ、グループ店舗数を一気に1139店舗に増やしている。売り上げに関しても、FCであるやきとり大吉の貢献はほとんどないのだが、コロナ前の17%増を達成している。
コロナを境にして、大幅に店舗数を減らした同業他社に対して、鳥貴族は店舗数をほとんど減らさず売り上げを増やした。さらには同業をM&Aして、店舗数を倍増させているのである。この違いが、コロナ後の居酒屋トップシェアにつながっているのだが、何が違ったのだろうか。
鳥貴族のコロナ発生直後の決算説明資料をみると、その方向性が明確に語られている。まず、コロナへの対応として感染予防を徹底することを明示。業績はコロナ期間中、大きな損失が出ることも予測した上で、金融機関からコロナ期間中に想定される必要資金を調達。予備的な資金調達枠を調達し、数年間の資金繰りを確保している。また、コロナ前までに不採算店舗の整理は終えていることから、大量の閉店はしないことを明記し、その方針は金融機関の了承を取り付けている。
そして、2020年時点で居酒屋の存在意義を説き、アフターコロナにも必ず必要とされるはず、という信念を明らかにしているのだ。つまり、コロナは一過性のものであり、必ず収束するので、その時に備えて店舗網を維持したまま数年を越してみせる、という意思表示であった。同業他社にはここまでの覚悟はなかったといっていいだろう。アフターコロナとなった今、鳥貴族はその予測通り、居酒屋業界における新たな王者のポジションを獲得したのである。
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