HPの2024年通期の決算をみると、売上高は前年比0.3%減の535億5900万米ドルだった。割合はPCなどのパーソナルシステムズが68%、プリントが32%だ。地域ごとの売上高をみると、米国が前年比0.7増の43%を占め、欧州・中東・アフリカ(EMEA)が同1.3%増の34%。日本とアジア太平洋(APJ)が同4.2%減の23%となった。APJのみが減少したものの、直近の第4四半期をみるとAPJを含む全ての地域が成長している。岡戸社長に日本の成長戦略を聞くとこう答えた。
「1つ目はWindows11への移行を進めていくことです。2つ目はAI PCで新しく発生した需要を確実に取ることです。3つ目はGIGAスクール構想第2期で、これは大きなビジネスチャンスだと考えています」
GIGAスクール構想は、児童生徒1人1台端末を持ってもらう文部科学省の政策だ。
「2025年の4月以降、PCの置き換えが始まりますが、この市場は巨大です。GIGA第1期から学んだものを生かした専用デバイスの製造を、日本HPの要望として米国本社にリクエストしました。それで開発されたのがHP Fortis Flip G1m 11 Chromebookです」
第2期のデバイスは、持ち帰ることを想定して軽量化を図った。加えて子どもは、大人では考えられない使い方をすることが分かり、堅牢性を強化している。例えば、キーボードのボタンを外そうとする児童が多かったそうで、外れづらい仕組みを作った。厳しい基準の落下テストも追加し、信頼性の確保に注力したという。自治体へのプレゼンでは実際に落下するところを見せた。
前述のeSIMの話には、多くの自治体が関心を示したと明かす。「自治体は予算の関係から契約容量を超えないようにします。eSIMは5年間、無制限ですから自治体の予算面でも貢献します」。容量を超えたことによって、児童生徒が学習できない状況が生まれては本末転倒だ。自治体がeSIM導入を検討するのは当然だろう。
岡戸社長に好きな言葉を聞くと「凡事徹底」「有言実行」「率先垂範」を挙げた。中でも「凡事徹底」が一番だという。「扱うビジネスが大きくなればなるほど、基本を忘れがちだとは思います。ロットが大きいところを優先するのではなく、全ての顧客に対し、期待されるスピードで対応するという基本をしっかりやることが何よりも大事です」
eSIMという日本独自の取り組みは武器になる。2025年はこれらをウリとして「徹底的」に販売することができるのか。日本市場での「成功のカギ」になりそうだ。
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