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「PCの生き字引」レノボ・ジャパン社長に聞く 日本市場の特徴と攻略法需要に変化あり(1/2 ページ)

» 2024年06月18日 10時17分 公開

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 調査会社「Canalys」のレポートによると、2024年第1四半期のPC世界シェア1位はレノボだった(前年同期比1ポイント増の24.0%)。2位のHP(0.6ポイント減の同21.6%)、3位のデル(0.9ポイント減の同16.2%)がシェアを落とす厳しい競争の中、レノボはシェアを伸ばしている。

 同社は、2022年にF1の公式パートナーになるなど世界での販売に力を入れている。レノボ・ジャパンの檜山太郎社長は、東芝で世界初のノート型PC「Dynabook」を立ち上げたメンバーの1人で、マイクロソフトでもこの業界に携わってきた「PCの生き字引」とも言える人物だ。その檜山社長に日本市場を攻略するための戦略を聞いた。

檜山太郎(ひやま・たろう)1963年生まれ。1987年、東芝に入社。東芝 パーソナル&クライアントソリューション事業部長、東芝クライアントソリューション取締役を歴任。2017年に日本マイクロソフト執行役員 常務就任。2022年10月からレノボ・ジャパン代表取締役社長。東京都出身。

収益構造に変化 客と伴奏できるかがカギ

 2023年のF1日本GP前のインタビュー【レノボ・ジャパン社長は東芝「Dynabook」立ち上げメンバー 変化への対応力とスピードが重要】で、檜山社長は「日本のPC業界を盛り上げたい」と話していた。その後の動きがどうだったかを聞くと「コロナ期間中は、在宅勤務向けに個人への投資が多い傾向にありました。コロナ後の動きを見ると、DXへの投資をしたい企業が、特にここ半年の間に多く出てきたように思います」と話す。

 問題は、そこから先だった。欧米では、DXを進める情報システム(IS)部門が会社の方針や戦略を見ながら、デジタル化の推進方法を考えていく。

 「一方の日本は、当社とAdobeさんでアンケートを取ったところ、機器の管理や使い方が分からない時や壊れた時のサポート、システムのメンテナンスなどに35〜40%もの時間を費やしていることが分かりました」

 企業のCIO(最高情報責任者)は、DXを通して会社を強化したい。しかし、このような雑務に時間を取られている実態が明らかになったのだった。

 レノボは修理に加え、コールセンターを持っているため、ユーザーサポートも可能だ。

 「IS部門の担当者の方に『ロジスティクスや資産管理なども含めて、レノボがやりましょうか?』と提案すると、皆さん喜んでくれました。メーカーとして製品を売るだけではなく、製品導入後の包括的なサポートもしましょうということで、レノボのインフラを活用しながらDaaS(仮想のデスクトップ環境をクラウド上で提供するサービス)への需要が増えていて、今その支援をしているところです」

 折しも現在は「コンタクトセンター」が重要視され、顧客との接点をどう持つかに注目が集まっている。

 「当社にとってコンタクトセンターは、“コンフィグレーションセンター(設定機関の意)”だととらえています。客の要望に合わせて作り込んでいくものです。会社によって希望が異なるので企業ごとにカスタマイズしたものを作っていかなければなりません」

 同社は、NECのデスクトップPCを作っていた群馬県の工場を、コンフィグレーションセンターに変えた。例えば、Wi-Fi機器を設置する最適な場所は、事業所の環境によって変わるという。まず、群馬の社員がクライアントのオフィスに行き、機器の設置方法を思案する。その後、群馬の事業所内でクライアントと同じ環境を再現して、実際に作動するのかテストを実施。それによりWi-Fiがつながるところと、つながらないところを確認する。問題をクリアし、全てOKであることを確認した後に納入する流れだ。レノボは、一つ一つの顧客に合わせて対応する。

 「顧客のDXをサポートするというより、顧客と『伴走』するところまで来ていると感じています。顧客からヒアリングした内容をAIによって解析し、問題箇所の特定に生かしています」

 現在、同社でのPC売り上げの割合は、個人と法人で3:7だという。檜山社長は「全体的なコストを下げ、環境問題への対応を気にする顧客が増えています。先ほどのDaaSで言えば、必要機材を全て購入するよりはサブスクリプションのような形で、必要なサービスに応じて毎月、お金を払う形態も増えていますね」と需要の変化を語る。キーワードは「CAPEX(資本的支出)からOPEX(事業運営費)へ」だという。つまり資産管理から経費管理にニーズが変わっているのだ。

 例えばCAPEXは、15万円の機器を購入して、いわゆる「減価償却」をする考え方だ。一方OPEXは、15万円の代わりに毎月3000円を支払う「経費」として計上する。それに加え、資産管理と廃棄の方も一緒にレノボに依頼する方法だ。客の財務状況に合わせて支払額や期間を変えられるので、会社側としても、IS部門の人材をDXに振り分けられるメリットがある。これはレノボがPC、サーバ、VR、ネットワークまでIT関連の全サービスを提供できるからこそのビジネス展開なのだ。

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