社員の自主的な活動が促進され効果も上がる背景として、八幡さんのような上層部が好意的であることに加え、社員が互いに応援したりフィードバックしたりする文化があることが非常に大きいようだ。
例えば直近の「Connected Walking」では、イベントが始まってから、運営側と参加者との間でルール変更に関して活発な議論が行われた。
新たに導入したルールが分かりづらかったため、変更をすべきかどうか運営メンバー内で検討するも結論が出ず、Slack上で意見を募ったのだ。すると約180人もの社員からコメントが集まり、オープンな議論の末に結論を出すことができたという。業務と無関係のイベントにもかかわらず、非常に多くの社員が注目し、自分ごとのように感じているのが感じられるエピソードだ。
他の社員がやっていることを応援し、前向きなフィードバックの労を惜しまない社員が多いのはなぜかと問うと、八幡さんは仕組みと文化の両面を挙げた。
「一つには多面評価の仕組みがあると思います。年に2回、上長だけでなく仕事で関わっている社員を本人が選び、評価を依頼するんです。そのような形で、お互いの優れたところや改善した方が良い点をオープンに伝え合うことが、仕組みの上で担保されています」
「また、私たちが大切にしている7つのバリューがあるのですが、フィードバックに関しては特に『リスペクト』という価値観が浸透していることが強く感じられます。何か指摘されても、ムッとしたり落ち込んだりするのではなく『ありがとうございます』と返す場面をすごくよく見ます」(八幡さん)
また、Slack上でのやりとりや自己開示が非常に盛んであるなど、オープンなコミュニケーションが根付いていることも、率直なフィードバックや自主的な活動を始めやすい心理的安全性の高さに寄与しているようだ。
さらに八幡さんは、社員の自主性を引き出すうえで必要なこととしてトップマネジメントの関与も挙げた。
「いくら『好きにやっていいよ』と言われても、上の人が全く関心を持たなかったり関わってくれなかったりするものは、長続きしないのではないでしょうか。トップマネジメントがロールモデルになることは、とても重要だと思います」(八幡さん)
社員に好きな活動をさせたら社内が一つにまとまらないのではないかと、心配する経営者もいるかもしれない。しかし、会社として重視する軸をしっかり打ち立て、トップが率先してコミットすれば、社員の自主性に任せても自然とベクトルが合ってくるものなのかもしれない。
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コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018)。「Yahoo!ニュース エキスパート」オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。
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