米国でTikTokを禁止すべき、という議論が初めて出たのが、第1次トランプ政権時の2020年。2015年に中国の習近平政権が「中国製造2025」を発表して以来、米国はそれまでの中国の市場解放を促す方針から、中国の覇権主義に対抗する姿勢へと舵(かじ)を切った。中国製造2025とは、2025年までに中国を「世界の工場」から先端技術を生み出せる国にする取り組みだ。
この流れで、当時のトランプ大統領はデータセキュリティ(中国製品がデータを盗むこと)とダンピング(中国政府の補助金による不当な価格低下)を理由に、中国の電気機器メーカーのファーウェイなど中国企業への締め付けを強化している。その中で、2020年にTikTokもやり玉に挙がった。
当時トランプ大統領は、すでに米国人利用者の多いTikTokを「米国製」にするために、TikTokを米国企業に売却するよう要求。何社かの米企業が名乗りを上げたが、結局買収計画は頓挫した。
一方で2022年、TikTok側はいかにアプリが安全かをアピールするために「プロジェクト・テキサス」なる活動を開始した。TikTok公式サイトによれば「プロジェクト・テキサスは、TikTokを利用する全ての米国ユーザーに安心感を与え、データが安全であり、プラットフォームが外部の影響を受けないという信頼を与えることを目的とした前例のない取り組みです」とし、「国家安全保障上の懸念に具体的かつ測定可能なソリューションで正面から取り組むことで、透明性と説明責任の概念を実践します」と宣言している。
2023年にはジョー・バイデン政権で、TikTokの米国法人のCEOが連邦議会の公聴会に呼ばれ、アプリの安全性について5時間にわたって厳しい質問を受けた。ただ、中国政府がTikTokにどれほどの支配権または影響力を持っているのかについての質問に明確に回答しなかったために、メディアからも厳しい批判を受ける結果となった。要は、中国政府がTikTokのユーザーデータなどにアクセスできるという疑念を払拭することができなかった。
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