そもそもTikTokにはいくつかの疑念が生じている。まずは中国政府がバイトダンス(つまりTikTok)の事業に影響を持っているのではないかという疑惑だ。中国には、政府が中国企業に内部データへのアクセスを要請できる国家情報法などがあり、全ての中国企業は政府の手の内にあると西側諸国では批判されている。米国や日本などで収集されたユーザーデータが中国政府の手に渡ることを警戒する向きもある。
筆者がさらに重要だと思うのは、コンテンツへの影響だ。TikTokでは、特にオススメ機能に中国政府の影響が及ぶ可能性が指摘されており、オススメのコンテンツから中国政府に都合の悪い情報が排除されるのではないかという疑念がある。逆に、中国政府が「喧伝(けんでん)」「教育」したい情報は、ユーザーが意識しないうちに出てくる仕組みになっているとされる。中国政府などが都合よくユーザーの価値観を変えてしまいかねない。
先に触れた公聴会でも、これらの指摘を覆すような回答はなかったとして、米国ではTikTok排除への動きが続いてきたのである。
2024年4月、米議会がTikTok禁止法を可決。すぐにバイデン大統領が署名し、TikTokが禁止される可能性が高まった。それによれば、2025年1月19日までにTikTokを売却しなければ、国家安全保障を理由に米国で禁止すると定めている。
するとTikTok側がこの決定を不服として、米最高裁に法律の差し止めを求める申し立てを行い、最高裁で協議が続いていた。だが、最高裁は2025年1月17日に禁止法を全会一致で支持する決定をしたというわけだ。
TikTok側の言い分としては、ソースコードは中国にあってエンジニアリングも中国で行われているため売却は不可能だ、というものだ。
すると、就任目前のトランプ氏がコメントを発表。「合弁事業を設立して米国が50%の所有権を持つことを望む。そうすることで、TikTokを救うことができ、安全に成長させることができる。米国の承認がなければ、TikTokは存在できないが、承認があれば数千億ドル、または数兆ドルの価値になる」と述べている。
つまり、米国企業との合弁事業として50%の所有権を米国が持つ、ということだ。
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