有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師
金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。
2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。
「みんなの75点より、誰かの120点」――ドン・キホーテ(以下、ドンキ)のPB「偏愛めし」シリーズが掲げるこのコンセプトは、一見するとリスクの高い挑戦のように映る。しかし、実際には同シリーズから数々のヒット商品が生まれ、ビジネスとしても成功を収めている。大衆向けではなく、特定の顧客層を狙った“とがった商品設計”が、なぜ優れたマーケティング戦略として機能するのか。その背景と要因を考察したい。
「偏愛めし」とはドンキが展開する食品シリーズである。公式Webサイトを見ると、「みんなの75点より、誰かの120点」というコピーとともに「開発者全員が“好きな人は絶対に好き!”と確信を持てる、偏愛メニューだけをお届けしていく」という宣言が目を引く。
食の好みは人それぞれなのに、世の中に並ぶ弁当や総菜は“万人に嫌われない及第点”ばかり。それではかえって、本当に強く愛される商品が生まれにくいのではないか――そんな問題意識が根底にあるようだ。
マーケティングの観点から見れば、これこそが「ニッチ戦略宣言」である。「万人向けの商品」ではなく、「特定の顧客にとって圧倒的な価値」を提供する方向性だ。その結果、大勢に好まれるかどうかは度外視してでも、一部の顧客にとって圧倒的に魅力的な商品を作り出そうという発想が明確に打ち出されている。
ドンキの偏愛めしと、他業界におけるニッチ戦略の事例を見ていこう。
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