有限会社金森マーケティング事務所 マーケティングコンサルタント・講師
金沢工業大学KIT虎ノ門大学院、グロービス経営大学院大学の客員准教授を歴任。
2005年より青山学院大学経済学部非常勤講師。
近年の物価高騰は、外食産業にとって大きな試練となっている。原材料価格の上昇、人件費の高騰、エネルギーコストの増加など、企業が直面する課題は多岐にわたる。
しかし、その中で「松のや」は朝食メニュー「玉子丼」を290円という低価格で提供し続けているのだ。この価格設定は、同業他社と比較しても際立つ安さだ。
本稿では、すき家、松屋、吉野家、かつやといった競合各社の朝食メニューと比較し、「松のや」がどのような戦略的意図を持ち、どのようにしてこの価格を実現しているのかを探る。また、3C分析とバリューチェーン分析を用いて、各社の戦略の違いや成功要因(Key Success Factor:KSF)を明らかにし、最終的にターゲティングとポジショニングまで踏み込んで考察する。
まずは、主要な競合他社であるすき家、松屋、吉野家、かつやの朝食メニューと価格を確認してみよう。
すき家が提供しているリーズナブルな価格の朝食としては、「たまかけ朝食」(ご飯並盛290円)、「まぜのっけ朝食」(同290円)が挙げられる。牛丼チェーンとしての強みを生かし、シンプルな朝食メニューを提供していることが分かる。
松屋は「Wで選べる玉子かけごはん」(330円)、「得朝牛皿定食」(390円)の安さが目立つ。松屋は定食メニューが充実していることが特徴で、朝食も同様だ。
吉野家は「納豆定食」(430円)、「納豆牛小鉢定食」(468円)あたりが安い。伝統的な和朝食をラインアップに加え、健康志向の顧客にも対応している。
松のやと同じくとんかつ専門店である「かつや」はどうか。朝食メニューの展開は一部店舗に限定しており、価格帯は400円以上が中心だ。ボリューム感のあるメニューでランチタイム以降のニーズに訴求するようだ。
こうして並べてみると、松のやの玉子丼は「業界最安水準」であることがよく分かる。
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