前回のコラムで述べたとおり、現在世界中に出店を進めている中国発の生活雑貨チェーンMINISO(メイソウ)は「フランチャイズモデルの進化形」ともいえる投資パートナーシップモデルを活用し、在庫リスクを本部が負担することで、各地域の現地法人パートナーが店舗運営に専念できる体制を築いています。
さらにSKU(商品管理単位)を約3000点に限定することでサプライチェーンの効率を高め、常に新商品を投入してリピーターを呼び込むサイクルを確立してきました。これは輸入規制の厳しいインドであっても高速に出店を続けられる背景の一つです。
このフランチャイズモデルは、現地企業が店舗運営の当事者となるため、インド政府から見ても外資企業ではなくローカル企業としての活動が評価されやすく、規制リスクを軽減できる利点があります。
とりわけ厳しい外資出資比率や投資要件が課される場合でも、実質的には本部が在庫や商品政策を統括しながら、運営面では現地パートナーが主導する形をとることで、外資規制を回避・緩和しやすくなるわけです。
また、現地パートナーはインド特有の流通インフラや商慣習を熟知しており、店舗開発や商品のローカライズにおいて大きなアドバンテージを発揮します。
こうしたMINISOの手法は、日本の製造小売企業が従来から持つ「低コストと高効率の追求」という強みにも通じるものがありますが、それを海外規制下でも柔軟に展開できるかどうかが成否を分けます。
MINISOのように、店舗の運営リスクや在庫リスクの配分を工夫すれば、投資負担を抑えつつ短期間で多店舗展開することが可能になります。また、SKUを絞り込むことで管理やコストを最適化しながら、定期的に新商品を投入して集客力を高めることができます。
日本の小売業がインド市場をはじめとする海外で成功するためには、厳格な外資規制の中でのフランチャイズモデル活用や商品ローカライズの徹底など、複数の要素を組み合わせた戦略が欠かせません。
国内市場が縮小しつづける日本の小売業にとって、海外進出は大きな課題です。MINISOの海外進出にも適応しやすいビジネスモデルから日本企業が学ぶ点は大きいと考えます。
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