「円しか稼げない会社は、沈む」 星野リゾート初の北米大陸進出、“無名の地”選んだ狙い(3/4 ページ)

» 2025年02月03日 08時00分 公開
[森川天喜ITmedia]

温泉旅館のスタイルにこだわる理由

――今回の新施設は西洋式のホテルではなく、日本の温泉旅館のスタイルにするとのことだが、温泉旅館にこだわる理由は?

 1980年代のバブル期に、日本のホテルチェーンがアメリカに進出したものの、残念ながら失敗して撤退した過去がある。その原因として「バブルの崩壊」ということが挙げられていたが、私が思うに、失敗の根本的な原因はほかにある。

 当時、私はホテル経営を学ぶためにアメリカの大学院に留学していたが、多くの同級生たちから「日本人がアメリカに来て、なぜ西洋式のホテルを運営しているのか」という質問を受けた。つまり、欧米人から見れば、日本人が海外で西洋式のホテルを運営するというのは、日本人が海外ですしを握るのではなくフランス料理をやっているのと一緒であり、必ず「なぜ?」という疑問が湧く。もちろん悪いことではないが、スッと腹落ちしない。

 日本人は好むと好まざるとにかかわらず、海外に出るときには、どうしても日本文化というものを背負わざるを得ない。そして、日本文化は、世界においてリスペクトすべき重要な文化として認識されている。だから、日本人が海外に進出するときには、どこかで「日本らしさ」を出さないと彼らも納得しない。これは、マーケティング上、非常に重要な視点だ。

――今回の北米の施設では、日本の「星のや」や「界」で提供しているのと同じサービスを提供するのか。それとも何らかのアレンジが必要になるのか。

 温泉旅館というものは世界のホテルの中で1つのカテゴリーを構成しうる、普遍的な価値を持つものだと思っている。従って北米においても、特別に今までと違うものをつくろうとは思っておらず、建物に関しては日本人の建築家を起用し、モダンテイストの「和」を基調としたものにする。また、スタッフの働き方も、われわれが「星のや」や「界」でやってきたのと同じように動いてもらう。

シャロン・スプリングスの新施設建設予定地2

 とはいえ、国内の施設においても、施設ごとにテーマは変えている。「星のや」であれば、軽井沢では「谷の集落」、富士では「丘陵のグランピング」、沖縄では「グスクの居館」といったストーリーを掲げている。つまり、地域らしさを反映しており、既存の施設と全く同じということにはならない。

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