――ほとんど名前の知られていない場所への進出は、マーケティングの見地から問題ないのか。
実は、名前が知られていないことも、われわれのビジネスにとってプラスに働くと考えている。例えば近隣にある有名リゾート地のサラトガ・スプリングスには、ゴルフコース、競馬、アートフェスなど、見るべきさまざまなコンテンツがすでにある。一方、シャロン・スプリングスはほかに何もないので、われわれが用意する温泉文化を存分に体験していただけるという読みがある。
また、過疎化が進んだ町に日本企業が投資することは現地の人たちにとっては、非常にウエルカムなことであり、これも決め手となった。
さらに現地メディアも注目してくれているが、それは(アメリカ人も)全く知らない場所に日本企業が進出するからこそだと思う。有名観光地ならば、新しいホテルが1軒増えるというだけの話で、たいした話題にならないかもしれない。
――新施設のスタッフは日本から連れて行くのか、現地雇用か。
大半が現地で雇用するアメリカ人になる。われわれの施設とアメリカのホテルとでは働き方がまったく異なるので、彼らには開業までの間、日本に来て温泉旅館ブランドの「界」で仕事をしてもらいたいと考えている。
日常の業務を把握しながら、われわれがどのようにして季節の移ろいに接しているかを1年かけて体得してもらう。そして次の年には一人前として業務に当たってもらうことを想定している。新施設の開業は2028年を予定しているが、こうした準備が必要なので、すでに採用を開始している。
――世界で自国優先の保護主義的な経済傾向が強まっている。とくにアメリカではトランプ氏が大統領に就任し、その傾向が強まると思われるが、海外への投資はリスクにならないか。
われわれが手掛ける案件は、例えば日本製鉄による、アメリカを代表する企業であるUSスチールの買収事案などとは同じようには受け取られないだろう。過疎化が進んだ町に投資し、雇用を創出することは、彼らにとって何もマイナスにならないからだ。例えば、人口減少が進んだ日本の地方に、台湾メーカーが半導体工場を建設するといっても、大きく反対されることがないのと一緒だ。
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